社説:自宅療養13万人超 医療人材確保、優先せよ

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 新型コロナウイルスに感染しても入院できない自宅療養者が全国で13万人を超え、過去最多となった。新規感染者が6日、約1カ月ぶりに1万人を下回ったとはいえ、重症者は2千人台で医療体制は依然として逼迫(ひっぱく)、予断を許さない状況だ。

 自宅療養中の死亡が相次いでおり、臨時医療施設の整備推進などが不可欠だ。十分な治療を受けられずに自宅で亡くなるという痛ましい事態をこれ以上、引き起こしてはならない。

 そもそも「療養」という言葉が、この病気に対する認識を誤らせてはいないか。療養とは本来、治療を受けながら体を休めて養うことを意味する。

 自宅で容体が急変して亡くなる事例が相次ぐ現実を直視すれば、「療養」とは程遠いと言わねばならない。やむを得ず自宅で待機する急変リスクのある患者―というのが実態だろう。

 入院できない患者の受け皿としては22都府県、3政令市が7月以降、臨時医療施設を少なくとも40カ所整備(予定含む)。厚生労働省は8月下旬になってやっと各自治体に整備を要請していた。

 そこで急浮上しているのが医療人材確保の問題だ。いくらハコを整備しても、医師や看護師らを確保できなければ施設は機能を果たさない。全国の自治体のほとんどが人材確保を課題として指摘。「非常に困難を来している」との声や「国が責任を持って対策を」など政府に指導力を求める声が上がっている。

 厚労省は対策のため医師、看護師を施設に派遣する病院への補助金を倍増。離職中の「潜在看護師」の掘り起こしも進めるという。だが、これだけで人材を十分確保できるのか。コロナ患者を受け入れていない病院から、順番に少しずつ人材を派遣してもらう方法もあるはずだ。

 政府は金銭的な支援にとどまらず、人材確保の仕組みづくりにも主体的に乗り出すべきではないのか。医師会、看護協会、病院間の連携を円滑に進めるため、各自治体の調整機能をさらに強化することも必要だ。

 医療体制が依然厳しい中、政府は早くも行動制限緩和案をまとめた。10~11月に希望者全員へのワクチン接種を終えたい意向で、この段階で緊急事態宣言発令地域でも飲食店の酒類提供などを容認するとみられる。

 営業時間の制限や大規模イベントの人数制限なども緩める予定。ただし十分な感染対策を取っていることが前提となる。

 将来的な社会経済活動の再開をにらみ、政府が見通しや新たな対策を示す必要性は理解できる。問題は今、それを示すことが妥当か否かということだ。

 接種が終わらない現状で緩和策を示すことは、「感染対策を緩めても大丈夫」といった誤ったメッセージになりはしないか。現段階では接種を加速させるとともに、臨時医療施設の整備や人材確保など医療体制の拡充を優先させるべきだ。

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