社説:緊急事態、月末まで 医療逼迫の解消第一に

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 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が出ている21都道府県のうち、東京、大阪など19都道府県について、政府は12日までの期限を30日まで延長することを決めた。新型コロナ流行「第5波」の影響により、医療現場で厳しい状況が続いているのが理由だ。

 入院先が見つからずに自宅療養を余儀なくされ、容体が急変して亡くなる例が相次いでいる。助かるはずの人を助けられない状況に対し「医療崩壊」が始まっていると危惧する声もある。政府は医療体制の逼迫(ひっぱく)解消を第一に、感染対策に全力を挙げなければならない。

 現在の宣言地域のうち宮城、岡山の2県はまん延防止等重点措置に移行する。重点措置対象となっている12県のうち6県を12日で解除。残る6県と新たに移行する2県の計8県は30日を期限とする。

 緊急事態宣言は昨年4月に初めて発令され、解除と発令が繰り返されてきた。第5波で東京に4度目の宣言が出されたのは7月。その後、対象自治体の拡大や期限の延長が行われた。

 この間、東京五輪・パラリンピックが開かれた。ほとんどの会場は無観客だったが、国民の行動の緩みを招き、感染急拡大の一因になったとも指摘されている。さらなる延長は、これまでの政府の見通しの甘さや対策の不十分さを示すと言わざるを得ない。

 新規感染者数は8月下旬から減少傾向に転じている。しかし、医療現場や保健所の逼迫は依然深刻だ。臨時の医療施設整備を含む病床の拡充や医療スタッフの確保、自宅療養者に対する健康観察の強化、若い世代のワクチン接種加速など、課題は山積している。一つ一つ着実に解決していかなければならない。

 政府は、宣言延長と併せて宣言解除の新基準を決めた。新規感染者が2週間程度安定して減っていることを前提に、病床使用率や重症病床使用率が50%未満となることや、重症・中等症の患者数が減少傾向にあることなどが条件となる。医療現場の状況を重視するのは当然だ。

 政府は希望者のワクチン接種が完了すると見込む11月ごろをめどに、宣言発令地域の行動制限を緩和する方針も決定した。接種済みであることや検査が陰性だったことの証明を条件に、県境越えの移動や飲食店での酒類提供などを認める。医療逼迫が続くさなかに制限緩和方針を示すのは拙速ではないか。

 退陣を表明した菅義偉首相が延長期限を今月末としたのは、29日投開票の自民党総裁選に合わせてのこと。新内閣発足までに宣言と重点措置が全面解除されるのが望ましいとの判断だ。

 科学的根拠よりも政治日程に基づき期限を決めたことは、感染対策への信頼を損ないかねない。菅首相は対策に空白が生じることのないよう、医療現場の状況をしっかり見極めながら責任を全うしてほしい。

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