北斗星(9月10日付)

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 菅義偉首相は官房長官時代、名刺に記した氏名に振り仮名を付けていた。「衆議院議員」と職名を添え、裏には官邸の住所と電話番号を記載していた

▼ちょうど1年前の今頃は余白に「よろしくお願い致します」と手書きし、議員会館内の自民党議員事務所を回って総裁選での支持を求めていた。首相に就くと名刺には内閣総理大臣の肩書と氏名だけを表記。振り仮名も官邸の住所も電話番号もない。情報を事細かに盛り込む必要のないことこそが「日本の顔」になった証しだった

▼名刺の使用期限は残りわずかとなった。先日、菅首相は退陣の意向を表明。昨晩の会見ではコロナ対策専念を理由に挙げつつ、「派閥がないので(総裁選出馬となれば)自らいろんな行動をしなきゃならない」と説明した。党内力学に翻弄(ほんろう)された舞台裏が垣間見えた気がした

▼一議員に戻れば、どんな名刺を持つのだろうか。現在、秘書たちが使う名刺には、衆院議員としての選挙区や座右の銘など人となりを示す情報が盛り込んである

▼「アルコール 全然ダメ」と下戸を明かすあたりに、ちゃめっ気がにじむ。自身の名刺にも印刷したら親しみやすさが増すだろう。趣味は「渓流釣り」とある。湯沢市秋ノ宮の実家そばを流れる役内川でミミズを餌に釣り糸を垂れたのが、その原点だという

▼番記者が「仕事中毒では」と心配するほど休みなく働いた菅首相。一息ついたら、思い出の川でせせらぎと向き合い、余暇に浸ってもらいたい。

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