社説:行動制限緩和方針 慎重な感染見極め肝要

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 政府は希望者のワクチン接種が完了する11月ごろをめどに実施する行動制限緩和の基本方針を決めた。新型コロナウイルス感染がゼロにならなくとも、日常生活や経済活動を回復させることは必要だ。ただこのタイミングでの決定には疑問がある。

 基本方針を決めたのと同じ対策本部会合で、発令中の緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の延長も決定した。延長理由は高い水準が続く重症者数、病床使用率など危機的な医療の逼迫(ひっぱく)度だ。命を守るための宣言延長と、旅行や飲食などの行動制限緩和が同時に論じられたことに強い違和感がある。

 宣言延長で人々に危機感を伝えようとする時、先のこととはいえ制限緩和が一緒に決定されるのでは効果が薄れる恐れがある。感染症の専門家に慎重姿勢が根強かったのは当然だ。

 一方で人々が度重なる宣言の発令や延長に慣れ、効果が上がらなくなったとの指摘もある。コロナ禍の「出口」を示すことで、いま一度、自粛などへの協力を得ようという狙いだろう。

 営業制限の打撃が長期化している飲食をはじめ、宿泊、旅客、観光などコロナ禍に耐えてきた業界にとっては待望の緩和方針であることも確かだ。「明るいニュース」と歓迎する声も上がった。

 制限緩和にはワクチンの2回接種が完了した接種済証か、PCR検査などの陰性証明の提示を求める仕組みが活用される。それを条件に緊急事態宣言下でも都道府県をまたぐ旅行や大規模イベント開催を認め、飲食店の酒類提供も容認する方針。実施が見込まれるのは2カ月先とはいえ、大幅な緩和だ。

 重点措置の地域では、一定の要件を満たした飲食店に酒類提供や営業時間の延長を認める。10月にも実施する予定の実証実験は日常の回復に向けた重要な試みになる。

 ワクチン頼みに懸念すべき点もある。第5波では2回のワクチン接種にもかかわらず、デルタ株に感染した患者が少なくない。次々と現れてくる新たな変異株に現在のワクチンがどこまで有効か、見通すのは難しい。

 また制限緩和の条件となるワクチン接種済証の提示が差別を生む可能性がある。接種できない人、しない人が不利益を受けないようなしっかりした対策が必要になる。

 気掛かりなのは緩和をスタートした後、再び制限をかける必要が生じた場合の対応だ。感染拡大局面で観光支援事業「Go To トラベル」をストップできなかった昨年の反省を生かせるかどうかが問われる。

 制限緩和は菅義偉首相が道筋を付けた後、次期首相が実施する。その前に懸念される問題点の徹底検証が必要。感染拡大へ警戒を緩めず、タイミングよくブレーキを踏めるか―。次期政権が感染状況の変化をよく見極め、緩和と制限を柔軟に実施できる仕組みが肝要になる。

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