社説:北朝鮮ミサイル 軍拡競争に歯止め必要

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 北朝鮮が日本海に向けて弾道ミサイル2発を発射した。日本の排他的経済水域(EEZ)に落下したとみられる。航空機や船舶への被害はなかったが、東アジア地域の緊張を高める行為であり、看過できない。

 北朝鮮は今月11、12の両日にも新型長距離巡航ミサイルの発射実験を行ったと発表している。相次ぐミサイル発射に対して菅義偉首相が「国連安全保障理事会決議に違反しており、厳重に抗議するとともに強く非難する」と述べたのは当然だ。

 いまなぜ、北朝鮮はこうした軍事力を誇示するのか。8月の米韓合同軍事演習に強く反発し、対抗措置を警告していたことから、米韓両国をけん制する狙いもあるとみられる。

 日本で開かれた日米韓の北朝鮮担当高官による協議、韓国で行われた中韓外相会談の直後というタイミングでもあった。弾道ミサイル発射は、自国兵器の性能の向上を対外的に見せつける宣伝効果を狙った可能性もある。

 北朝鮮の弾道ミサイル発射は韓国による潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験と同じ日に行われた。これは韓国の発射実験をあらかじめ知っていた北朝鮮によるけん制とみてよいのではないか。

 韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は一貫して南北関係改善を重視し、北朝鮮に対話再開を呼び掛けてきた。一方で国防力強化にも力を入れている。今回の発射実験もその一つだ。

 SLBM発射実験で文氏は「ミサイル戦力の増強こそが北朝鮮の挑発に対する確実な抑止力になり得る」と強調した。北朝鮮が行ったミサイル発射実験を指しての発言だ。

 北朝鮮側は文氏の「挑発」という発言を問題視。両国が同じようにミサイル開発を進めているのに、韓国は「平和のため」で、北朝鮮が「脅威」とされたのは遺憾とした。

 これはミサイル発射を繰り返す北朝鮮側の都合のいい言い分にすぎない。とはいえ抑止力を理由に双方が軍事力増強を競い合えば、軍拡競争に歯止めがかからなくなる恐れがある。

 それは日本も同じだ。きょう告示される自民党総裁選の立候補予定者らは北朝鮮の脅威を巡っても主張を繰り広げている。「抑止力強化」「防衛費の大幅増」が声高に論じられ、「敵基地攻撃能力」保有の可能性に踏み込む主張もある。

 中国の海洋進出により台湾海峡、沖縄県・尖閣諸島周辺での緊張も高まる。自民党総裁、そして首相を目指す立候補予定者には強硬姿勢ではなく、外交をはじめ平和的手段による解決を目指す姿勢が求められる。

 いまの東アジアに必要なのは軍拡競争の歯止めだ。北朝鮮が非核化、拉致問題の解決に向けた動きを進展させて対話の席に着くよう、日本は国際社会と連携して粘り強く求めていくことが大切だ。

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