社説:大館たんぽまつり 食の伝統、次代に継承を

お気に入りに登録

 来月の第49回本場大館きりたんぽまつり(大館食の祭典協議会主催)は大館市のニプロハチ公ドームでの開催を断念し、ドーム駐車場でドライブスルーによる販売のみ行うことにした。新型コロナウイルスの感染状況を考慮した。例年とは異なる方式で規模縮小となるが、継続することで大館の食をアピールし伝統の継承につなげてほしい。

 まつりは長く同市の長木川河川敷で行われていたが、2012年に会場をドームに移して規模を拡大。大館商工会議所や青年会議所の若手が実行委員会を組織して企画・運営に当たり、19年は3日間で計約11万5千人(主催者発表)が来場した。

 出店業者がブースできりたんぽ鍋などを販売したほか、ステージイベントも実施。「文化の継承をオール大館で」と訴えて飲食店や製造業者、農家らをもり立てるとともに、次代を担う小中学生に古里の魅力を伝えようと取り組んできた。

 昨年はコロナの影響によりドームでの開催を中止。食材を詰め合わせたきりたんぽセットのネット販売や「なべっこ」用の食材提供などを行った。今年はドーム開催の可否を専門家らに諮問。入場者数に上限を設けることで可能との答申を受け、準備を進めてきた。

 だが、県の警戒レベルが4に上がったため断念。各店のきりたんぽ鍋3種を組み合わせドライブスルーで販売することにした。これまで鍋の持ち帰りという発想はあまりなく、実行委は容器の検討から行ったという。

 コロナ禍にあえぐ業者を支援しようと、市は昨年8月、きりたんぽセットの送料を無料にする助成を開始。20年度は24店約2億3400万円分の送料を助成し、販売額は例年の3割増しと好調という。これに新たな需要が加わるよう、テークアウトの定着を図ってもらいたい。

 これまでのドーム開催で大きな力を発揮したのが、運営ボランティアとして参加する市内の小中学生らだ。市教育委員会の「子どもハローワーク」の一環として募集し、会場清掃やあいさつ、名所ガイドなどを担当。活動の中で地域の魅力や食文化の大切さを実感してきた。ドーム開催の中止により、こうした機会がなくなるのは残念だ。

 食生活に関する佐々木信子・秋田大元教授の県内調査では、きりたんぽ鍋を作ったことがある人は1996年89%、2010年92%だった。9割に上る手作り度は、本県を代表する郷土食であることを示すと佐々木元教授は指摘。比率の上昇については、学校や県などが郷土食の伝承に取り組んできたことが奏功したとみている。

 食文化をつなぐには子どもや若者への働き掛けが欠かせない。郷土食が身近に感じられるよう飲食店や製造業者らの存在も重要だ。きりたんぽまつりは両者を結ぶ場と言える。コロナ禍の中でも、未来の地域の担い手にしっかりと引き継ぎたい。

秋田の最新ニュース