社説:東電テロ対策不備 核防護、抜本的に見直せ

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 柏崎刈羽原発(新潟県)のテロ対策不備問題で、設置者である東京電力が報告書をまとめた。明らかになったのは、核物質防護に対する意識が極めて希薄な組織としての姿だ。

 テロリストの侵入を容易に許しかねないずさんな管理体制に驚かざるを得ない。原発を安全に再稼働する資格が東電にあるのか、疑問が湧いてくる。

 原子炉全7基が停止中の同原発は再稼働に向け、6、7号機が原子力規制委員会の審査に正式合格済み。だがテロ対策の不備が判明し、規制委が今春、事実上の運転禁止を命じている。

 不備の一つは侵入検知器の故障に伴う不十分な代替措置だ。海外では、放射性物質を入手しようとテロリストが原発を標的にした痕跡も見つかっている。こうした核テロに対して国際社会が警戒を強めている現実を見れば、検知器の適切な運用は原発の安全性確保に不可欠だ。

 にもかかわらず柏崎刈羽原発では2015年度以降、検知器の故障が相次ぎ、復旧に30日超かかる事例が増加。1年近くかかるケースもあったという。

 復旧までの代替措置として社員1人でカメラによる監視と侵入警報への対応を兼務。警報が鳴った場合は監視を中断していた。しかし本来であれば社員はカメラ監視のみを担当、他の業務に従事しない「専任監視」をしなければならなかった。

 核物質防護意識の甘さは何が原因なのか。その一つとみられるのは東京電力福島第1原発事故以降のコスト優先の考えだ。

 検知器は当初、リースだったが、買い取りなどによる自社設備化を推進。その結果、億単位で契約額を圧縮した半面、検知器の使用年数も長くなった。

 リース元は性能維持への懸念を訴えていた。だが結果的に受け入れられなかったことになる。原発が立地する柏崎市の市長が「コストというのは(原因に)あったと思う」と述べたのも当然だったのではないか。

 さらに対策不備では同僚のロッカーから無断でIDカードを持ち出した運転員が昨年、中央制御室に入室していた。このほか他人のIDで防護区域などに入ろうとしていた事案は12件。社員は内部脅威になり得ないとの思い込みがあったという。

 核物質防護部門への軽視が今回の問題を引き起こした疑いもある。「リスペクトされておらず、警備の中でも特に重要な業務であるとの認識が持てなかった」との声もあったからだ。

 報告書はまとめで、組織としての「核物質防護への意識の低さ」「風通しの悪さ」を指摘。一連の対策の不備を見れば、安全性への意識の希薄さは企業体質なのかと疑わざるを得ない。

 東電は福島原発事故を引き起こした当事者だ。この過酷事故では今も多くの人が福島県内外で避難生活を続けている。その重い事実を再認識してテロ対策を抜本的に見直さない限り、再稼働を論ずるべきではない。

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