社説:緊急事態全面解除 今こそ医療体制拡充を

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 政府は、19都道府県に発令中の緊急事態宣言をあす30日の期限で全面解除することを決めた。併せて、8県のまん延防止等重点措置も解除する。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う宣言と重点措置が、全国のどこにも出されていない状況は約半年ぶりとなる。ワクチン接種が進み、新規感染者が大幅に減るなど感染状況が改善していることを受けた判断だ。

 厚生労働省の専門家組織の分析でも、新規感染者は全国的に急速に減少。自宅療養者や重症者も減り続け、死者数も緩やかな減少傾向にある。医療体制も改善に向かっているという。

 こうした状況を受け、政府は「コロナとの共存」へとかじを切るとみられる。先日発表された経済財政白書も「感染対策と日常生活の回復を両立し、経済を回す次のステップ」を目指すよう訴えた。

 宣言発令と延長などが各地で繰り返された結果、飲食店や宿泊業などは大きな打撃を受けた。感染防止のため数々の制約が伴う生活が長期にわたり、人々が疲弊しているのも確かだ。

 ワクチン接種が着実に進んでいることから、「経済を回す」段階に進む必要があるのは理解できる。問題はその進め方だ。

 今回の全面解除に当たり、政府はイベントの人数制限を緩和。飲食店の時短営業は継続するが、酒類提供は知事判断で可能とした。いずれも1カ月をめどに段階的に緩和する方針だ。

 これによって人々の動きが盛んになり、地域経済の活性化が期待できる。ただし制限の緩和は慎重に進めるべきだ。「対策を緩めても大丈夫」と誤解されて感染再拡大を招かないよう、政府や自治体は正しいメッセージを発し続ける必要がある。

 感染者が急減した状況を逃さず、医療体制を集中的に拡充することも不可欠だ。冬には「第6波」の懸念もあり、政府と自治体は臨時医療施設の整備を含む病床確保を短期間で強力に進めるべきだ。通常医療と両立できるよう医療人材を確保する仕組みづくりも忘れてはならない。

 自宅療養については現状のまま継続していいのか。22日に全国で約2万9千人と大幅に減少したとはいえ、一時期は13万人を超え、容体が急変して自宅で亡くなる人が各地で相次いだ。

 感染者は入院して治療を受けるのが本来の姿だろう。十分な治療が受けられずに自宅で亡くなるという事態を二度と招かないよう、臨時医療施設などで全員が確実に治療を受けられる道を探ることも必要だ。

 政府分科会の尾身茂会長はコロナとの闘いは長期化すると指摘。「社会の不安感が無くなるには2、3年はかかるのではないか」との見方を示している。

 「感染対策と日常生活の回復」の両立を目指す政府は、この長期化の可能性を直視しなければならない。その上で、感染状況の変化に機動的に対応できる医療体制を構築すべきだ。

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