社説:県政運営の新指針 賃金向上へ道筋を示せ

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 県は新たな県政運営指針「新秋田元気創造プラン」(2022~25年度)の骨子案をまとめた。若者の県外流出などによる人口減に歯止めをかけるため、県民の賃金水準向上を柱に据えたのが大きな特徴だ。県内企業の実態に即した支援策など、目標達成に向けた実効性のあるプランに仕上げてもらいたい。

 人口減は、死亡数が出生数を上回る「自然減」と、転出者が転入者を上回る「社会減」によって生じている。社会減の主な要因は、高校や大学を卒業した段階で若者が就職のために県外に出ることだ。

 県は、秋田と首都圏との賃金格差が流出につながっていると分析。県政運営指針で今回初めて、賃金水準向上を前面に掲げた。

 県が毎年実施している県民意識調査では、力を入れてほしい重要課題として「若者に魅力的な働く場の確保」を挙げる人が多い状況が続く。佐竹敬久知事は「魅力とは給与だ」が持論。賃金水準の向上に正面から取り組まない限り、若者の流出を食い止めることはできないと判断したのだろう。

 本県の賃金水準は全国平均を大きく下回っている。厚生労働省の20年賃金構造基本統計調査によると、基本給などの所定内給与は月額24万6千円で、都道府県別では45番目。全国平均とは6万1千円の開きがあり、最も高い東京都よりも12万6千円低い。

 人口減に歯止めがかからない中、県が賃金水準向上を目指すのは当然だ。問題は、どのようにして実現するかに尽きる。

 骨子案は、県内産業の競争力の強化や地域資源を生かした成長産業の発展を目指すとしている。再編・統合を通じて経営規模拡大に取り組む県内企業の支援も打ち出した。規模が小さいほど賃金が低い傾向があるため、規模を大きくすることが有効とみているようだ。

 気掛かりなのは骨子案とはいえ、具体性に乏しく、実現への道筋がよく見えないことだ。プランは年度末までに策定することになっており、企業の生産性向上につながる具体性のある施策を可能な限り盛り込んでいくことが欠かせない。企業の理解と協力を得て賃金引き上げの機運を高めることも重要だ。

 賃金水準向上への課題や方策を協議するため、県が開いた「公労使会議」では、経営者側の委員から「賃金を上げたくても簡単には上げられない」との声が上がった。新型コロナウイルス禍の中で経済の先行きに不透明感があるため、収益が増えて余力が生まれたとしても、賃上げには慎重にならざるを得ないのが現実なのだろう。

 委員は「賃金を上げた企業に何らかのメリットがあれば、前向きになれる」とも指摘した。県はこうした企業側の声をできるだけ多く拾い上げて課題を正確に把握、その上で賃金水準向上への道筋を明示すべきだ。

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