社説:衆院解散、総選挙へ コロナ後見据え論戦を

お気に入りに登録

 岸田文雄首相が衆院を解散し、19日公示、31日投開票の衆院選に向け、事実上の選挙戦が始まった。首相就任から27日後の投開票は現憲法下では最短だ。

 内閣の実績がまだないと言っていい段階での衆院選であり、国民は判断材料に乏しい中で政権選択を迫られる。新型コロナウイルス対策が喫緊の課題だが、各党は新型コロナ収束後の日本の進むべき道を明確に示し、政策を競い合うべきだ。

 菅義偉前首相は、新型コロナ感染「第5波」の高まりの中で内閣支持率が低迷。衆院議員の任期満了が迫る中、先月初め、突然退陣を表明した。

 岸田内閣は自民党総裁選を経て4日に発足。閣僚13人が初入閣で衆院当選3回の若手も3人おり、経験不足は否めない。報道各社の世論調査では、支持率は菅内閣末期より改善したが40~50%台止まり。感染状況は落ち着いてきたとはいえ、対応を誤れば情勢の変化もあり得る。

 国会の場では岸田首相の所信表明演説と、各党の代表質問が行われただけだ。野党側は一問一答形式で質疑を行う予算委員会の開催を求めたが、自民は応じなかった。このままでは岸田内閣の政策への疑問は十分解消されず、閣僚の資質、能力などを判断するのも難しい。判断材料不足を補うために、岸田内閣と自民は国民への真摯(しんし)な訴えに徹しなければならない。

 岸田首相は解散理由について「新型コロナウイルス対策、経済対策の早期実現」を挙げた。過去の解散は首相が新たな政策などを打ち出し、国民の信を問う形を取ることが多かった。衆院議員の任期は21日まで。今回の解散、衆院選は事実上、任期満了に伴うものと言っていいのではないか。

 新型コロナを巡っては自民ばかりでなく野党も、困窮する世帯などに対する給付金などの経済支援を公約として打ち出している。その財源の多くは国債発行だ。「ばらまき合戦のようだ」との批判もある。財政出動はやむを得ない面があるが、各党はその後の財政健全化も含めて論戦を深める必要がある。

 安倍、菅両内閣は成長重視の経済政策「アベノミクス」を掲げた。岸田首相は新自由主義的な政策を転換し格差を是正するため「成長と分配の好循環」を実現すると訴える。総裁選では、株式売却益など金融所得に対する課税強化に言及していたが、代表質問では「まず成長を目指す」として先送り。岸田首相はアベノミクスを総括し、自らが目指す「新しい資本主義」との違いを明らかにすべきだ。

 格差是正は野党にも共通する公約だ。立憲民主党は金融所得への課税強化などにも積極的だ。その実現性や政権担当能力に関し、国民の信頼を得られるかが問われる。

 かつてない短期決戦だが、各党には国民にしっかり判断材料を示す責務がある。与野党の活発な論戦を期待したい。

秋田魁新報電子号外