社説:[2021衆院選]コロナ対策 中長期的視点が不可欠

お気に入りに登録

 新型コロナウイルスの新規感染者数が全国的に大幅に減少、変異株が猛威を振るった「第5波」は落ち着きつつあるようだ。医療体制が改善傾向にある今、何をなすべきなのか。衆院選ではまず、それが問われる。

 冬場には「第6波」の可能性も否定できない。感染再拡大に備え、各党が主張するように医療体制の拡充などが必要なのは言うまでもない。

 「災害レベル」と呼ばれた第5波では自宅療養者数が一時、13万人を超え、自宅で亡くなる事例も相次いだ。厚生労働省の調査では8月のピーク時、療養者らの約10人に1人が中等症だったことが判明。呼吸不全のため酸素投与が必要な人もいた。

 それほど重い症状にもかかわらず、自宅療養を強いられ、容体が悪化した可能性があったということだ。こうした事態を二度と引き起こさないため、臨時医療施設や酸素ステーションなどを臨機応変に開設できるよう準備を進め、並行して医療人材を確保しなければならない。

 やむを得ず自宅療養とする場合も健康観察を万全にすることが不可欠だ。第5波では保健所の業務逼迫(ひっぱく)などで安否を確認できず亡くなる人もいた。一方で、地元の医師会や薬剤師会と連携して見守り態勢を強化した保健所もある。こうした事例を全国で共有して対応してほしい。

 ワクチン接種が進むとともに、感染対策と日常生活の両立を目指す国の実証実験も始まった。宿泊施設に接種済証などを提示。観光庁が2週間後、宿泊者の健康状態を調べるという。

 そこで重要となるのは個人、事業者レベルで基本的な感染対策を徹底することだ。実験結果を科学的に分析して、行動規制を緩和すべきか否か慎重に判断しなければならない。

 未接種者に対する差別を防止する対策も欠かせない。長野、高知など8県は既に差別禁止条例を制定。接種済証導入に伴って新たな差別が生じないよう、国や自治体は具体的事例を示すなどして明確なメッセージを随時発信すべきだ。

 中長期的視点も忘れてはならない。第5波が落ち着きつつあるからといって、経済再生への歩みを急いで感染対策を怠れば、感染再拡大で社会が再び大きなダメージを受けかねない。

 まず、感染経路調査などを担う保健所、PCR検査の中核となる地方衛生研究所の立て直しが必要だ。2009年の新型インフルエンザを受け、厚労省報告書は体制強化を提言。にもかかわらず統廃合や職員数削減が進められ、新型コロナに十分に対応できなかったからだ。

 新型コロナが収束したとしても、再び新たな感染症が流行しないとも限らない。国と自治体の役割分担を改めて明確にするとともに、双方が緊密に連携して有効な対策を講じられる体制を構築すべきだ。強い指導力を発揮できる司令塔を設けることも考えなければならない。

衆院選の特集ページはこちら

秋田の最新ニュース