投票へ行こう:20代記者の素朴な疑問、秋田大・加納講師に聞く

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 2017年の前回衆院選で、秋田県内有権者は39%が棄権した。投票率向上を目指すキャンペーン「投票へ行こう」を衆院選の期間中、随時掲載し、投票を通じた政治参加のあり方を考えていく。



 投票率が低下傾向にある近年の選挙で、特に低迷しているのが若い世代の投票率だ。いま行われている衆院選で投票先をどう選べばいいのか―。主権者教育に詳しい秋田大教育文化学部講師の加納隆徳さん(42)=社会科教育学=に、20代の記者2人が素朴な疑問をぶつけた。


 日比野桃子(25) そもそも、選挙はなぜ大切なのでしょう。

 「選挙とは多様な意見をまとめる手段であり、社会を少しずつ改善する一つのきっかけになるものです。『投票で政治を変える』と大きく構えず、自分たちの意見を政治に反映させる第一歩と捉えてみてください」

公約どう判断?


 加藤広大(24) それぞれの公約や訴えをどう判断して投票したらいいでしょうか。

 「自分の考えとぴったり合う候補や政党ってそんなにいるものではありません。例えば、新聞などに掲載された公約の一覧表を使い、賛成かどうかプラスマイナスで点数化してみると、理解を深めやすい。自分が関心のあるテーマの政策を並べてみるのもいいですね」

投票に関する素朴な疑問を加納さん(左)にぶつける2人


 「与党の政治について賛成か反対かで判断する方法もあります。いまの政権に対する考え方で投票先を決めるやり方です。今回、県内の小選挙区は全て与党と野党の一騎打ちなので分かりやすいですね。政策テーマに沿って質問に答えると考え方が近い政党や候補者を示してくれるサイトもあります」

 加藤 初めて投票した時、自分が入れた人のその後が気になりました。

 「公約を読み比べたりして自分なりに納得して投票すると、候補者や政党のその後を追い掛けますよね。そして『言ったこと守ってないじゃん』となれば次の選挙でまた考えればいい。トライアンドエラーです」

 「投票を機に、政治家や政党を応援してみるというのも大事。アイドルグループの『推しメン』(一押しのメンバー)じゃないけど、気になる候補者に投じてみて数年後、やっぱりだめだったとなることもある。厳密に『正解』を求めすぎず、自分がベターだと思う方に投じることが重要です」

SNSの声は?


 日比野 候補者の情報を集める手法として、会員制交流サイト(SNS)はどうでしょうか。

 「SNS上の声は先鋭化した意見になる傾向があると感じています。SNSは自分と同じ意見の人とつながりがちで、極端な意見が表れやすい。自分と違う意見に触れて、考えることが大事だと思っています」

 日比野 自分が入れた人が落選すると票が無駄になってしまう気もします。

 「落選した側への票は、当選した側が『どれぐらい支持を受けていないか』を測る材料になります。当選した側へのけん制機能として生きるんです。接戦であるほど、政治家は自分とは反対の立場の人たちに気を使います。反対票が一定数あると次の選挙を意識して政治家は行動するようになるので、1票の意味がなくなるわけではないんです」

投票率落ちれば?


 加藤 投票率が落ちるとどうなるのでしょう。

 「投票者数の多い世代向けの政策が優先されていく可能性があります。でも、例えばハコモノを建てる際、借金を将来返すのは若い世代です。若い人が投票しなければ、意見を代弁してくれる政治家がいなくなる恐れもあります」

 日比野 意見が割れるようなテーマでも周囲と気軽に話し合える社会が理想じゃないかなと思います。

 「互いに『正解』を言おうとするのではなく、多様な意見をフラットに話し合える社会にしていくことが大切だと思います。選挙の投票も『正解』ではなくとも、自分の声を政治の場に届ける一つのきっかけと捉えてはどうでしょうか」

 加藤 政治について身近な人と話すのは難しいようにも感じます。

 「政治について考えるハードルをもっと低くしてみてください。政治って『どの政党を支持する』という話になりやすいけど、そうではない。例えば仕事の合間に話す愚痴が、実は社会の構造的な問題とつながっていることもあるんです。投票が、そうしたことに考えを向けるきっかけになるかもしれません」

【かのう・たかのり】78年、岐阜県生まれ。筑波大大学院修了。東京学芸大付属高校で公民科教諭として主権者教育に携わり、帝京大講師をへて17年から秋田大教育文化学部講師。


県内の投票率 前回2017年衆院選での小選挙区の投票率は県全体で60・57%。戦後の衆院選で最低だった14年を4・79ポイント上回った。直近5回の衆参院選、知事選、県議選をみると、特に20代前半の投票率が25・80~37・92%と低く、全体(52・87~60・87%)を大きく下回った。

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