社説:[2021衆院選]農業振興 コメ政策、将来像を示せ

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 地域の稲作経営をどうすれば持続可能なものとすることができるのか。全国的なコメ余りで農家に仮払いされる本年産概算金が大幅下落する中、各党の農業公約ではまず、そのコメ政策が問われる。

 食の多様化や人口減で国内のコメ消費量が減り続ける中、新型コロナウイルスの感染拡大が需給バランスに影響。外食産業の需要が減って昨年産の過剰在庫が発生し、今回の概算金下落に結び付いた。

 産地からは今後の稲作経営に対する不安の声が相次ぐ。与野党とも、コメの価格維持対策を訴えているのは理解できる。

 与党は、集荷業者へのコメ保管経費の補助や作付け転換を促す恒久的予算の確保などを強調。野党各党は、戸別所得補償制度の復活や政府による緊急買い入れ、国の責任による需給調整などを掲げる。

 一部を除き、生産者の窮状を救うための政策であることに大きな違いはない。その先の問題として必要なのは、日本の稲作経営をどのような形で継続させていくかという視点だ。その将来像がなかなか見えてこない。

 国の政策としての生産調整(減反)は2018年産から廃止された。18年度めどの廃止を政府が決めたのは13年11月。40年以上続いた減反の廃止検討を政府、与党が打ち出してわずか約1カ月での決着だった。

 政府は当時、農地を集約して大規模化し競争力ある農家を育てるためと説明していた。近年、耕地面積の規模拡大が全国的に進んでいるのは確かだ。

 一方で、条件の不利な中山間地域の小規模農家への対策が手薄になったことはなかったか。そこに住み営農を続けるからこそ、集落や景観が維持されている面もあるのが農村の現実だ。

 輸出に向けて稲作の大規模経営化を進めるだけでなく、小規模経営にも光を当てる。そうした均衡ある視点が、稲作の将来像には必要なのではないか。

 稲作に限らず、多様な「農の形」を確保することも欠かせない。そこで注目されているのが、コロナの影響で失業や減収に追い込まれた人たちに携わってもらう取り組みだ。

 異業種からの参入で、新たな事業や商品開発のアイデアが生まれた事例もある。地方への移住者が農業と他の仕事を両立する働き方も登場。観光や福祉などとも結び付け、一人でも多くの人が参加しやすい仕組みづくりを強力に進めたい。

 コロナの影響や気候変動により頻発する自然災害を受け、食料安全保障の観点も重要になってくる。地球温暖化がさらに進めばコメの収量減や品質低下、果樹の適地北上、乳牛の牛乳生産能力低下などが懸念される。

 「命」を育む農の価値は、経済効率だけでは測り切れないはずだ。それぞれの地域の実情に即した技術面、資金面の支援策など多面的な政策の在り方も考えなければならない。

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