北斗星(10月29日付)

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 主人公の少年忍者が猛烈に素早く動き回ると、何人もいるように見えると説明があった。「忍法影分身」。本当にそんなことができるのだろうかと子ども心に思いながらも夢中で画面に見入った。50年ほど前のテレビアニメ「サスケ」の記憶がよみがえる

▼原作者としてその名を胸に刻んだ漫画家白土三平さんが亡くなった。差別や迫害と闘う人々を描いた未完の長編「カムイ伝」は、1960年代後半の学生運動に影響を与えたという。当時の子どもには「サスケ」の印象が鮮やかだ

▼昨年11月の矢口高雄さん(横手市増田町出身)、今年9月のさいとう・たかをさんと、漫画文化を現在の隆盛に導いた大家の訃報が続く。矢口さんは白土作品の熱狂的ファン。代表作「釣りキチ三平」の主人公の名は白土さんにあやかった

▼白土さんは本県で天然マイタケ採りをしたことがある。写真エッセー集「三平の食堂」によると、地元の練達者の案内で山道を歩いていたら前方をクマが横切り驚いたとか。切り株に生えた見事なマイタケやきりたんぽ鍋の写真は見ているだけでよだれが出てきそう

▼白土さんは分けてもらったマイタケを自宅に送ったが手違い続きで、行方不明になった。誰かがくすねて食べたと思ったらしい。腹を立てつつ面白がっている様子が人柄をしのばせる

▼読書週間が一昨日始まった。「週間」といっても11月3日の「文化の日」前後の2週間。秋の夜長に「カムイ伝」読破に挑戦してみるのもいい。

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