社説:国の石油備蓄放出 増産へ産油国と協議を

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 政府は、世界的な原油価格高騰を抑えるために石油備蓄の一部を放出する方針を明らかにした。米国の要請を受けた対応で、中国や英国、韓国、インドなど主要消費国が協調して実施する見通しだ。

 石油流通量は一時的に増えるかもしれないが、持続的な効果があるかは不透明。消費国が協力して産油国に働き掛けを強め、増産への合意を引き出すことが必要だ。日本が先頭に立って協議の場を設けるなど、積極的な取り組みを期待したい。

 世界的に新型コロナウイルス禍で停滞していた経済が回復基調に転じ、石油需要が増加。消費国は増産を要求してきた。だが石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の産油国でつくる「OPECプラス」は今月初めの閣僚級会合で協調減産の継続を決めた。

 欧州などで再び感染拡大が見られる。今後の動向次第では景気が後退し、増産しても余剰になりかねないと産油国が警戒するのはやむを得ない面がある。消費国側は産油国の懸念を払拭(ふっしょく)する努力が求められる。

 ガソリンや灯油などの燃料、原油由来の原材料などの値上がりは既に企業活動や日常生活に影響を及ぼしている。県内でも県民生活を直撃。本格的な冬を前に農業や運輸業、家計などへの深刻な影響が心配される。コロナ禍からの経済回復にも水を差しかねない。

 消費国は急激な価格上昇や紛争などによる供給不安に対応するため石油を備蓄してきた。原油輸入の9割近くを中東産油国に依存する日本も1970年代から備蓄を開始。男鹿市をはじめ全国に基地があり、備蓄量は国内消費242日分という。

 石油備蓄法により、放出は災害や中東の政情不安などで供給不足の恐れがある緊急時に限られる。今回は法に反しないよう、用途に制限のない余剰分の備蓄から一部を放出、売却する方針だ。

 日本の放出量は国内消費量数日分の見込み。各国の放出を合わせても世界の総需要と比較すればごくわずかで、長期にわたり価格を安定させられるとは考えにくい。

 協調放出による価格低下を避けるため、産油国がさらに生産を抑制する可能性があるとの観測も市場にはある。改めて産油国に強く増産を働き掛け、さまざまな課題や懸念の解消に向けて協議することが欠かせないだろう。

 政府は備蓄放出以外にも、ガソリンの小売価格上昇の抑制策を講じる方針。価格が一定の額を超えた場合、元売り業者を資金支援する内容だが、小売価格の抑制にどの程度効果があるかは疑問だ。

 岸田文雄首相は農業、漁業など業種別の対策も行うことを表明した。農家や漁民、中小事業者の経営や一般の家庭生活を守るため、実効性のあるきめ細かい対策が期待される。

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