社説:所信表明演説 実効性巡り論議深めよ

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 衆院選後初の臨時国会が召集され、岸田文雄首相が2回目の所信表明演説を行った。新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の感染拡大に備えるため、3回目のワクチン接種を「できる限り前倒しする」などと述べた。また、新型コロナを乗り越えた先に「新しい資本主義」の実現を目指すと主張した。

 新型コロナ対策や経済対策を盛り込んだ補正予算案は過去最大規模に膨らんだ。重要なのは予算の規模より、実効性ある政策であるかどうかだ。今国会は各党の代表質問だけでなく予算委員会も開かれる。岸田政権下で初の本格論戦が充実した内容になることが期待される。

 オミクロン株の感染は急速に世界各地に広がっている。岸田首相は、水際対策として全世界を対象に外国人の入国を禁止したことに触れ、「大事なのは、最悪の事態を想定すること」と強調。今夏の流行「第5波」などで政府のコロナ対策は後手に回ったが、その反省を生かす姿勢は理解できる。

 ただしオミクロン株の感染力や既存のワクチン、治療法の有効性など、いまだ不明な点が多い。分析を急ぎ、妥当な対策の在り方について論議を深め、場合によっては軌道修正することも必要だ。

 2回目のワクチン接種から8カ月以降としていた3回目の接種時期については、オミクロン株への効果などを見極めた上で前倒しするとした。接種を実施する自治体が混乱しないよう、ワクチン供給の量や時期について確かな見通しを示すべきだ。

 補正予算案は総額が36兆円近くに上る。コロナ禍が長引く中、企業経営や雇用を守り、困窮する人々に支援の手を差し伸べることは政府の重要な責務だ。問題はそうした目的に照らして適切な事業、予算になっているかだ。

 18歳以下への10万円相当の給付について岸田首相は、困窮世帯や学生への支援策と合わせて触れただけだった。親の年収960万円という所得制限は比較的高く、本当に支援が必要な人ばかりとは限らない。18歳超で支援が必要な人がいるのではないかとの疑問も残る。

 また、半分の5万円分をクーポン券で配布するため、現金で一括給付する場合より事務経費が約900億円膨らんだことを野党は問題視している。岸田首相には批判に謙虚に耳を傾け、必要があれば姿勢を改める柔軟さを期待したい。

 岸田首相は「成長と分配の好循環」を実現するため、看護、介護、保育、幼児教育などの分野で給与引き上げを行うと改めて宣言した。さらに民間の賃上げを支援するため、企業優遇税制の強化や補助金の補助率引き上げなどを実施する。だが、財源は国債頼みだ。年度末には国債残高は1千兆円を突破する。岸田首相には、財政再建について責任ある説明が求められる。

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