北斗星(12月14日付)

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 その姿は山が眠りに就いたようにも見える。秋田市内から望む太平山が昨日、雪化粧していた。家の屋根もうっすら白い。「そろそろ手を付けねば」。頬をたたく雪に年賀状のことを思い出した

▼気ぜわしい師走、書くのは骨が折れる。年始回り代わりの大切なあいさつと分かっていても、ちょっと気が重い。「年の瀬に横たわる一大暗礁」のごとし―。物理学者で随筆家の寺田寅彦が、賀状嫌いの友人を主人公にした短文(1929年発表)でやや大げさに書いている

▼この友人は50歳を超えて、そのありがたさに気付く。「切っても切っても切り尽(つく)せないほどの糸」で日本中の人々を結び付けているからだ。確かに年を取るほど大切さに気付かされる

▼ペンを手に、はがきに向かう。相手を思い浮かべる。随分会っていない人もいる。共に過ごした青春の日々が、記憶の底からひょっこり顔を出す。今、どんな暮らしをしているのだろう。そんなことを思い、その人にぴったりの言葉を探す。それが書く苦労であり、喜びでもある

▼スマートフォンなどの普及で年賀はがきの発行数は減り続けている。とはいえ、紙の賀状が姿を消すことは想像できない。あすからは受け付けが始まる。クリスマスまでに出せば元日には届く

▼新型コロナウイルスの新たな変異株・オミクロン株が出現し、状況は予断を許さない。だからこそ遠くに暮らす恩人や親類、友人、知人のことが気に掛かる。その思いを筆に託して賀状とする。

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