社説:八峰のサーモン養殖 果敢な挑戦で事業化を

 八峰町の若手漁業者らが、岩館漁港でサーモンの養殖試験に取り組む。内湾など静穏域の少ない本県は冬場に海が荒れることが多く、魚の養殖事業はごくわずかしか行われていない。試験では漁港内の空きスペースを活用し、安定的な収入源の確保を目指す。他の漁港にも広がる可能性があるだけに、果敢な挑戦で事業化につなげてほしい。

 試験は青森県でサーモン養殖事業を行う企業の協力を得て実施する。漁港内に5メートル四方のいけすを設け、同社から500グラムの幼魚を500匹購入して月内に投入。6カ月ほどで2~3キロに育てて出荷する。県と町がいけす整備などを補助するほか、技術支援に当たる。

 主体となるのは、岩館地区の若手漁業者たちが今夏設立した企業だ。漁獲物のネット販売などを行う会社も既に立ち上げており、2社で養殖から販売まで手掛ける予定。「サーモンは回転ずしなどで人気があり、利益率が高い。短期間で出荷できるのも魅力」だという。

 さらに、「会社組織とすることで関わる人を増やし、地区全体の活性化を目指したい」としており、試験の結果次第でいけすを増やす計画だ。

 今期は秋以降のしけで操業できない日が多いなど、岩館をはじめ漁業者は苦戦を強いられている。サーモン養殖は天候などに左右されることの少ない冬場の収入源として、経営の安定化に役立つことが期待される。

 県内の漁業者は減少が続いている。2018年の国の調査では773人となり、5年前から2割以上減った。経営安定化は後継者確保にもつながるため、養殖など新たな取り組みで減少に歯止めをかけたい。

 県が力を入れている「つくり育てる漁業」は、マダイなどの稚魚を海に放流し、自然環境下で成長してから漁獲する栽培漁業が中心。県内の海面養殖の生産量は193トン(18年)で、漁業生産量の3%にとどまる。養殖の大部分はワカメであり、魚類は約5トンにすぎない。

 漁業者の所得アップを図ろうと県は19年度、男鹿市の椿漁港にいけすを造り、漁獲した魚を大きく育てる畜養試験を開始。20年度にはサーモンの養殖試験を始めた。県水産漁港課によると、昨冬からのサーモンの成育は順調でサイズに問題はなかったものの、水温が上がってから取り上げたため、生存率が4割を切るといった課題を残した。

 その際の知見を岩館漁港の養殖試験に役立てるとともに、水温や水質、成長具合などさらにデータを積み上げ、今後の事業化に生かす必要がある。

 漁業者の減少とともに漁船が減り、県内の各漁港には空きスペースが出ているという。所得向上や経営安定化のため、空きスペースの活用が急がれる。岩館漁港の養殖試験はその先駆けといえ、漁業者と行政ががっちりとタッグを組んで取り組んでもらいたい。

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