社説:臨時国会閉幕 「聞く力」の原点に戻れ

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 岸田文雄首相にとって、衆院選後初の本格論戦となった臨時国会が昨日、閉幕した。新型コロナウイルス対応の経済対策を盛り込んだ2021年度補正予算が成立。18歳以下への10万円相当給付で迷走するなど、政府対応が問われた国会となった。

 一般会計歳出は、補正予算として過去最大の約36兆円に上る。10万円相当給付の財源も含まれる。当初は現金5万円を先行して給付し、残りをクーポンで来春配布する方針だった。

 だがクーポン事務費が1千億円近くかかる上、自治体の事務負担も大きく、各地で批判が噴出。政府は年内の現金一括給付を容認せざるを得なかった。

 岸田首相は「柔軟な制度設計」を強調。確かに自らアピールする「聞く力」を発揮した結果と言えるだろう。ただし自治体側には混乱が生じた。給付の狙いも不明瞭になり、「ばらまき」と言われても仕方がない。

 国会議員に月額100万円を支給する文書通信交通滞在費(文通費)問題は、今国会の法改正が見送られた。日割り支給を優先して改正する案が浮上したが、使途公開などを巡って与野党協議がまとまらなかった。

 文通費は非課税で、使途報告や残金返還の義務もない「第二の歳費」だ。地方議会では文通費に当たる政務活動費の領収書を公開。文通費は公金の使い方として国民の感覚と乖離(かいり)が大きいと言うほかない。使途公開などを含め早急に改正すべきだ。

 国土交通省の建設受注統計の書き換えも深刻な問題だ。二重計上などにより公表結果に影響した可能性がある。国内総生産(GDP)の推計にも関わるため数値底上げを疑う声も出た。

 書き換えなどの根底には公文書軽視があり、森友学園問題の決裁文書改ざんと同根ではないのか。岸田首相は「公文書管理は民主主義の根幹」と述べた。事実関係を徹底調査し、国民の前に明らかにするのは当然だ。

 その一方で、岸田首相が消極姿勢を貫いているのが森友学園問題への対応だ。決裁文書改ざんを強いられ、財務省職員だった夫が自殺に追い込まれたとして、妻が国と同省元幹部に損害賠償請求訴訟を起こしていた。

 これに対して国は先日、請求を全面的に受け入れる異例の「認諾」を行った。原告の目的だった夫の自殺の真相究明は、国との訴訟終結で遠のいた。

 岸田首相はこの問題に「政府として真摯(しんし)に向き合いたい」と答弁した。一方で真相究明の道を閉ざしたことは「真摯」な対応とは言えない。「1人の命を失ったわけだから裁判で真摯に対応してほしかった」との切実な妻の声にも、「聞く力」を発揮するべきではないのか。

 岸田首相が「聞く力」を強調したのは「政治の根幹である国民の信頼が崩れている」との認識があったからだろう。原点に立ち戻って厳しい批判や少数意見にしっかり耳を傾け、政治への信頼回復に力を注ぐべきだ。

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