社説:国政この1年 対話の政治へ歩みだす

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 新型コロナウイルスが今年も猛威を振るい、昨年に続いて首相が交代するなど国内政治は波乱の1年となった。本県出身者として初の首相となった菅義偉氏が約1年で退任、後任には岸田文雄氏が就任した。

 菅氏の退任は、感染拡大のたびに緊急事態宣言発令などを繰り返し「後手」批判を浴びたことが大きい。都内の感染者が急増する中、菅前政権は東京五輪開催へと突き進んだ。「第5波」では医療体制が逼迫(ひっぱく)し、自宅で亡くなる人が続出した。

 世論調査では内閣支持率が31・8%へと急落。秋の衆院選が迫る中、求心力を失って退任へと追い込まれた形だ。

 一方で、ワクチンについては「1日100万回」の号令を掛けた結果、接種が進んだ。2回目を終えた人の割合は先月時点で7割を超え、先進7カ国(G7)中、2位となった。その点は高く評価すべきだ。

 ただし、その政治の在り方は「対話」と「説明責任」を軽視したものだったと言わざるを得ない。憲法に基づく臨時国会召集を野党が要求した際は長期間「放置」。日本学術会議の任命拒否問題でも、理由を明確に語ることは最後までなかった。

 一国の指導者であれば野党をはじめ、さまざまな相手と真摯(しんし)に向き合い、自らの言葉で積極的に議論を深めることが必要だ。それができない限り、政治への信頼回復は遠のくばかりだ。

 衆院選で与党は、国会運営を主導できる絶対安定多数を上回る293議席を獲得。岸田政権に問われるのは、この安定した基盤をどう政治に生かすかだ。

 自民党総裁選への立候補表明時、岸田氏は菅前政権を念頭に「政治の根幹である国民の信頼が崩れている」と強調。その後、「聞く力」を掲げて対話を重視する姿勢を見せた。

 18歳以下への10万円相当給付では自治体の批判などを受け、年内の現金一括給付を容認。国土交通省の建設受注統計書き換え問題では、第三者委員会の設置を早々と表明した。

 こうした対応は「聞く力」の結果だろう。ただ、この力を使い分け、相手の主張を巧みにかわしているようにも見える。

 森友学園問題を巡る訴訟で被告の国は、原告の損害賠償請求を全面的に受け入れる異例の「認諾」を行った。これにより国との訴訟は終結し、財務省決裁文書改ざんの真相解明という原告の目的は封じ込められた。

 いまだ疑念が拭えない桜を見る会問題では、岸田首相は「大いに反省すべき点がある」とするにとどまる。国会議員の文書通信交通滞在費問題でも、主導して解決する姿勢は見えない。

 新たな変異株・オミクロン株への対応をはじめ、福島第1原発の処理水放出や米軍の辺野古移設計画など国政の課題は山積する。岸田政権はその土地の人々をはじめとする国民の声に耳を澄まし、「対話」を軸とする政治の再生に力を注ぐべきだ。

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