社説:トンガ沖大噴火 日本は支援に力を注げ

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 南太平洋のトンガ沖海底火山で大規模噴火が起き、現地で甚大な被害が出た。最大15メートルの津波が発生、家屋が全壊するなどし負傷者は多数に上る。人口の7割以上の最大8万人に影響が出た可能性があるという。

 被害の全容は依然不明だ。日本政府は100万ドル(1億1400万円)以上の無償支援を決定。情報を迅速に収集し、トンガの求める援助に全力を挙げてほしい。復旧・復興に向け、東日本大震災など大災害での経験を生かさなければならない。

 今回の噴火は20世紀最大だったフィリピン・ピナトゥボ山に次ぐ規模だという。噴火の際に出た衝撃波が空気を振動させる「空振」が発生。圧力の高い空気に海面が押し下げられるなどし、津波が起きたとみられる。

 約8千キロ離れた日本にも到達。岩手県・久慈港では1・1メートルの津波が観測された。その際にあらわになったのが、国内の防災対応の問題点だ。

 気象庁は当初、「津波」という言葉は使わず、「若干の海面変動が予想されるが、被害の心配はない」と発表。だがその後も潮位が上昇し続け、噴火から約11時間後に一転して津波警報・注意報を出した。

 時刻は午前0時を過ぎており人々が就寝中だった。空振による津波は「経験のない事例」(気象庁担当者)というが、早い段階で発表していれば未明の避難は避けられたはずだ。

 岩手県や三重県ではカキの養殖施設が津波の被害を受けた。発表が遅く、減災のための対応が遅れたとの声も出ている。

 専門家は「これだけ大規模な海底噴火なら当然津波を想定しないといけない」と批判。こうした声を気象庁は重く受け止め、幅広い科学的知見に学ぶとともに、多様なケースを想定した防災対応に力を注ぐべきだ。

 大規模噴火が発生した2日後は、阪神大震災から27年の日だった。6千人以上が犠牲になったこの震災では、記憶の風化防止が大きな課題だ。

 「一人一人が防災・減災について考え、行動する『災害文化』」(兵庫県知事)をどう育て、各地に定着させるか。全国の自治体や地域、学校といったさまざまなレベルで粘り強く防災教育に取り組みたい。

 政府の地震調査委員会によると、30年以内の発生確率は宮城県沖地震(陸寄り)と南海トラフ巨大地震が70~80%、首都直下地震は70%程度。この厳しい想定を直視し、地震に強い社会をつくることも不可欠だ。

 それは大都市圏への集中を是正し、「分散型社会」を構築することだ。広範囲に被害が及ぶ巨大地震では、救援の手も物資も行き渡らない恐れがあると地震学者は指摘。「県単位ぐらいで最低限の自立した暮らしができることが重要だ」と訴える。

 トンガ沖の噴火を遠い国の出来事として受け止めず、足元の備えを徹底して見直す。その取り組みを進めねばならない。

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