社説:春闘スタート 経済回復へ賃上げ必要

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 新型コロナウイルス禍の中、春闘が事実上スタートした。経団連と連合は賃金引き上げの必要性について一致している。岸田文雄首相は「成長と分配の好循環」を掲げ、賃上げした企業への減税などの優遇策を打ち出している。どれだけ効果を上げられるのかが注目される。

 食品の価格上昇、ガソリンの高止まりなどが生活費を押し上げている。賃金が上がらないまま物価の上昇が続けば、家計の負担感は増し、消費は冷え込む。国内総生産(GDP)の半分程度を占める個人消費を伸ばすことが、経済の活性化には必要。賃上げが欠かせない。

 経団連は経営側の春闘方針を18日に公表。業績が好調な企業に対し、年齢や勤続年数に応じた定期昇給に加え、基本給を底上げするベースアップ(ベア)の実施を促した。収益や成果を働き手に適切に分配するのは企業の責務であり当然だろう。

 日本の賃金上昇の鈍さは先進国の中でも顕著だ。経済協力開発機構(OECD)の調査では、物価や為替レートを加味した2020年の平均賃金は1990年に比べ、4%しか伸びていない。日本は35カ国中22位に低迷している。

 要因の一つに、賃金が割安な非正規労働者が倍増し、雇用者に占める非正規が4割近くになったことが挙げられる。非正規の平均月給は正社員より約10万円低い。非正規労働者の処遇を改善し、格差解消を進める必要がある。

 一方で、企業が先行きの不透明さなどから社内に蓄えた「内部留保」は9年連続で過去最高を記録し、2020年度は約484兆円に上った。こうした企業は内部留保を人件費に振り分けることも可能なはずだ。賃上げ要求への対応が注目される。

 連合は昨年と同様に、定期昇給分とベアを合わせて4%程度の賃上げを要求。大企業はもちろん、全労働者の7割近くを抱える中小企業の賃上げも欠かせない。

 岸田首相は昨年9月の自民党総裁選の公約で「新しい資本主義」を政策の柱に据えた。それ以来、「成長と分配の好循環」を実現すると訴えてきた。昨年11月には業績がコロナ禍以前の水準を回復した企業に対し、3%を超える賃上げを期待すると表明した。

 政府は25日に22年度税制改正の関連法案を閣議決定し、国会に提出。給与総額を前年度より3%以上増やした大企業と、1・5%以上増やした中小企業に減税を行う。

 ただ3%以上の実現は簡単ではないかもしれない。安倍晋三政権下で「官製春闘」が始まった14年以降、大手の賃上げ率は2%以上3%未満で推移し、21年は8年ぶりに2%を割った。

 個人消費が活性化しなければ企業業績も伸びず、好循環は始まらないだろう。企業には前向きに取り組んでほしい。

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