北斗星(2月28日付)

お気に入りに登録

 居間にある鉢の小さな緑に、なぜか癒やされる。丈は中指ほどでつやのある葉が4枚。日々、少しずつ大きくなる。冬至で湯船に浮かべたユズの種をまいたら、うれしいことに芽を出した

▼うまく育てれば実をつけるのだろうか。植物を種から栽培するたび、生命の神秘に触れる思いがする。ちっちゃな一粒から驚くほど大きな緑になる。そのさまは燃える命を目の当たりにするようだ

▼種は時に人をつなぐ。例えばヒマワリだ。大館市の釈迦内小学校は地域と共に栽培活動を展開。2019年には南太平洋のトンガに送り、絆を深めてきた。当時の先生と現地の日本大使館職員が同級生という縁だった

▼その南の国が先月、海底火山の噴火により大きな被害を受けた。小さな種が生んだ交流はここでも力を発揮。「元気づけたい」。釈迦内小の中で上がった声は全校に広がり、子供たちが書いた励ましの手紙は100通を超えた。在日トンガ大使館に送るという

▼阪神大震災や東日本大震災でも、被災地に咲いたヒマワリの種はたくさんの手を経て各地に散らばった。大きく黄色い鮮やかな花は、天空の太陽が目の前に姿を現したようにも見える。「希望」や「再生」という言葉を人はそこに重ね合わせる。だからこそ種は遠くへ運ばれるのだろう

▼ゴッホにはヒマワリを描いた作品がある。キャンバスからほとばしる命のきらめき。画集を見詰めながら、太陽のような花の種がなぜ人と人をつなぐのか分かる気がした。