社説:強制不妊賠償命令 国は救済に力を尽くせ

お気に入りに登録

 旧優生保護法(1948~96年)の下で障害者らに行われた強制不妊手術を巡る裁判で、大阪高裁は国に賠償を命じる初めての判決を出した。著しい人権侵害があった責任を国は認め、上告せずに救済に力を尽くすべきだ。

 旧法を巡る国家賠償訴訟は2018年から仙台など全国9地裁・支部で起こされた。これまでに出た地裁判決6件は、4件で旧法の違憲性が認められたものの、賠償請求は全て退けられた。不法行為から20年たつと請求権が消滅する民法の「除斥期間」が壁となった。

 今回の訴訟は障害のある70~80代夫婦と70代女性の3人が原告。提訴の時期は不妊手術から50年前後、旧法から差別に当たる条文が削除されてから20年以上がたっていた。このため除斥期間を適用するかどうかが焦点となった。

 大阪高裁は除斥期間を機械的に適用するのは「著しく正義、公平の理念に反する」と指摘。原告が18年の全国初の提訴などを知り、提訴できることを認識してから6カ月以内については除斥期間は適用されないとし、賠償請求権を認めた。差別や偏見などにより長らく声を上げにくかった状況を踏まえた画期的な判断だと言えよう。

 判決が命じた賠償額は70代女性に1430万円。夫婦のうち妻に1100万円、夫に220万円だった。不妊手術を受けていない夫に対し、妻への権利侵害と「不可分一体の関係にある」として賠償を認め、救済の道を切り開いたことも評価したい。

 高裁は国に対して、「旧法によって障害者への差別、偏見を正当化し、助長した」と厳しく批判。国はこうした指摘を重く受け止め、被害者たちへの救済に本腰を入れて取り組むべきだ。

 国の統計によると、旧法下で遺伝性疾患や知的障害、ハンセン病などを理由に約2万5千人が不妊手術を施された。旧法は「障害者差別に当たる」との批判を受け、1996年に母体保護法に改められた。

 2019年には救済法が施行された。ただ、今年1月末現在、同法に基づく一時金の支給決定は966人にとどまり、十分に行き渡っていないとみられる。

 支給対象は手術を受けた本人に限定。1人につき一律320万円を支払うとしているが、子どもを産み育てる権利を奪われた苦しみに対して不十分だと言わざるを得ない。

 今回の高裁判決を踏まえ、賠償額や対象者などを含め抜本的に見直す必要がある。被害者の痛みや思いに寄り添って救済を進めてほしい。

 救済法に基づく請求は原則、同法の施行後5年以内と定められ、残り2年余りとなっている。こうした制度があることや、自身が被害を受けた事実すら知らない人もいるとされる。被害者の高齢化が進む中、国が責任を持って周知すべきだ。

秋田の最新ニュース