北斗星(3月8日付)
1966年、電子部品関連の会社を起こした若者が、現在の埼玉県狭山市の入曽(いりそ)地区にある会社から初めて仕事をもらった。その恩と感動を忘れまいと、地名を社名に取った。先頃、横手市への新工場進出を決めた東証1部上場のイリソ電子工業(横浜市)だ
▼その若者は旧十文字町(現横手市)出身で、現在は取締役会長の佐藤定雄さん(84)。本紙の取材に「横手市は自らの原点」と故郷への思いを語った。ごく小規模で起業し、今や従業員は3千人超。約50億円を投じ2025年の横手工場の稼働を目指す
▼「大きく成長させて進出を決めることができた。念願がかなった」と佐藤さん。進出には古里への思いと地元からの熱心な誘致活動があった。だが、それだけでは決められないだろう
▼同社は災害時の事業継続など、非常時にバックアップの役割を果たす拠点が必要と考えて踏み切った。関東、太平洋側の茨城県常陸大宮市に次いで2番目の国内工場。東北、日本海側への進出はリスク分散になる
▼企業の進出の決め手は何だろう。長年、企業誘致に従事してきた県の担当者に聞くと、進出の合理性に加えて感覚的なものが左右する場合がある。そのため大雪への心配などを解消できるよう説明しているそうだ
▼「特に知らない土地への進出は不安で勇気もいる」。稼働後の地元との継続的な関係や、サポートは重要だという。将来、200人規模を目指す工場だ。安心して操業できる関係をつくっていきたい。
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