社説:ウクライナ侵攻 日本は毅然と制裁貫け

 ロシアのウクライナ侵攻により、国内外への避難民が1千万人を超えた。激戦地の南東部マリウポリでは大勢の市民が孤立。電気や水道が断たれ、人々は極限状態に置かれている。

 侵攻が長期化する中、犠牲になっているのは子供を含む一般市民だ。空爆された劇場には数百人が避難。絶え間ない攻撃で救助隊が到着できず、被害の全容は依然把握できないという。

 両国の停戦交渉は難航。このままでは市民の犠牲が増え続けるだけだ。国際社会はウクライナへの支援強化とロシアへの制裁徹底の一方、両国の話し合いによる停戦を一日も早く成立させるよう全力を尽くすべきだ。

 国連のグテレス事務総長は侵攻により穀物やエネルギー価格が高騰し、「世界的な食料危機が迫っている」と指摘。「この戦争に勝者はいない」と述べた。確かに、両国に深刻な影響が出ていることは明らかだ。

 ロシアはウクライナ側の激しい抵抗を受け、投入戦力の1割以上を失った可能性があるとの分析もある。経済制裁による自国通貨の急落で輸入品を中心に物価が上昇し、市民生活は激変した。2022年の国内総生産(GDP)成長率はマイナス15%との厳しい予測もある。

 ウクライナでは既に多くの市民が犠牲になっており、被害は甚大だ。侵攻が長期化した場合、今後1年以内に国民の約3割が貧困層になる恐れがあると国連は警告している。

 ロシア軍の無差別攻撃が続く中、ウクライナのゼレンスキー大統領は昨日、戦闘中の国家の元首として、日本の国会向けに異例のオンライン演説を実施。「侵略を止める仕組みづくりへ、日本は大きな役割を果たせる。ウクライナのため、世界のため、一緒に努力すれば想像以上のことができる」と訴えた。

 これに対して日本はどう応えるのか。これまで、プーチン大統領らロシア政府関係者に対する資産凍結などの制裁を発動。先進7カ国(G7)の一員としての結束と決意を示してきた。

 こうした動きに対して、ロシアは北方領土問題を含む日ロ平和条約締結交渉の中断を突然発表した。一連の経済制裁に対する報復措置とみられる。

 だが日本による制裁は、独立国を侵略したロシアへの対抗措置であり、原因をつくったのはそもそもロシア側だ。岸田文雄首相が交渉打ち切りを「断じて受け入れることはできない」と非難したのは当然だろう。

 問題は、安倍政権が主導した経済協力の関連経費約21億円を容認し、22年度予算を成立させた点だ。米欧と共に制裁を科す一方で、経済的な協力関係を保ち続けるのは国際社会の足並みを乱すことになりはしないか。

 停戦を実現するため、日本は米欧と連携して毅然(きぜん)と制裁を貫き、ロシアを孤立させて譲歩を引き出すべきなのではないか。論理的に矛盾する対応では停戦が遠のきかねない。

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