社説:電力需給逼迫警報 災害視野に備え拡充を

 電力供給体制のもろさが露呈した。東京、東北の両電力管内の電力供給が需要に追い付かない恐れがあるとして、政府は初の「電力需給逼迫(ひっぱく)警報」を発令。綱渡りの需給とはなったが、利用者の節電協力もあって辛うじて大規模停電を回避できたという深刻な事態だった。

 福島県沖を震源に福島、宮城両県で最大震度6強を観測する地震が16日深夜に発生。この地震で両県を中心に火力と水力発電所が緊急停止した。このため東北や首都圏で最大220万戸が一時停電した。

 需給バランスが崩れて管内全域が停電する「ブラックアウト」発生を避ける目的で、強制停電の仕組みが働いたためだ。最悪の事態とはならず、ほとんどが早期復旧した。2018年9月の北海道地震の事例が教訓として生かされたといえる。

 地震発生時の一時的な停電はやむを得ない場合もあろう。しかし東電管内が地震から5日後、東北電管内が6日後という警報発令は理解に苦しむ。

 警報は天候悪化による悪条件が重なって発令された。地震後も停止したままの火力発電所があり、電力供給力が低下していた。そうした中、季節外れの冷え込みで暖房利用が増え、太陽光発電の出力低下が予測された。最悪の場合、大規模停電となる恐れもあったという。

 警報に応えて企業や市民が積極的に節電に協力したこともあって事なきを得た。だが利用者の節電頼みでは心もとない。

 唐突と受け止められた警報発令も反省材料だ。逼迫が特に懸念されたのは22日。しかし東電管内への発令は21日午後9時すぎで十分な周知が難しいタイミングだ。節電が当初想定ほど進まなかったのは当然だ。

 電力不足が生じた地域が余裕のある他地域の電力会社から供給を受ける「電力融通」も十分に機能したとは言い難い。結果的に送電網拡充の遅れが浮き彫りになった。東西間での融通は異なる周波数を変換する設備も整備を急がなくてはならない。

 南海トラフ巨大地震、首都直下地震、日本海溝・千島海溝沿い巨大地震などへ備えることが急がれる。災害発生時に被災地域に対して他地域が電力融通で支援する送電網はいざという際の生命線になる。

 今回の電力需給逼迫で既設の原発稼働を求める声もあった。ただ供給不足が地震に端を発していることを忘れてはならない。災害への備えを考えるとき、電力供給が最優先ではなく、徹底した安全性重視が第一なのは言うまでもない。

 脱炭素化は世界の潮流であり今後ますます加速するだろう。現在の火力依存から脱却し、再生可能エネルギーの拡大推進が必要だ。その際に天候に左右される風力、太陽光などの再エネの弱点を補う蓄電設備強化や技術向上にも努めなくてはならない。それは同時に災害時の備えにもつながるはずだ。

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