社説:にかほの池田作品 観光素材、磨き上げたい

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 きょう30日は、にかほ市象潟町出身の木版画家池田修三さん(1922~2004年)の生誕100周年。子どもや風景を描いたメルヘン調の作品はここ10年で広く人気を集めるようになった。地元象潟地域では、商店や飲食店などが所有する作品を展覧会と称して公開するなど住民が積極的に作品をPRしてきた。

 池田さんの生家向かいの象潟公会堂ではあす1日まで、木版画と音楽の記念イベントが開かれている。節目を機に池田作品を観光素材として磨き上げていくことが期待される。

 池田さんは県内高校の美術教諭を経て、1955年に上京し木版画の制作に励んだ。作品は旧秋田相互銀行の通帳デザインに採用されたほか、85年からの2年間は旧象潟町広報の表紙を毎月飾り、地元の住民には特に親しまれる存在となった。

 「地元の多くの人に見てほしい」という本人の意向で、作品は手頃な価格で販売された。象潟地域では出産や新築などの祝い事で贈り物に使われ、多くの店頭や民家の玄関で見られる。

 作品は見る人の郷愁を誘い、色使いは爽やかさを感じさせる。こうした作風に地元出身作家への親近感も加わり、住民に好まれたのだろう。まさに地域に溶け込んだアートである。

 地域外で注目されるきっかけとなったのが、2012年12月発行の県フリーマガジン「のんびり」。作品に感銘を受けた編集長の藤本智士さん(48)が特集を組んだ。インターネットで閲覧した全国の読者から、にかほ市に「象潟で作品を見たい」との声が寄せられたという。

 これを受け翌年、藤本さんや作品を所有する住民と市が象潟公会堂で作品展を開催。その後は秋田市や県外でも開かれた。

 15年には藤本さんの発案で、市などが「象潟まちびと美術館」を開催。地域全体を美術館に見立て、象潟郷土資料館を主会場に公共施設や商店など46カ所で計130点を展示した。講習や試験を受けた「学芸員」の市民52人が各会場でガイドを担当。1カ月ほどで資料館だけでも3200人を集めた。

 住民が自らの生活に根付く作品の魅力や思い出を語り、観光客をもてなすという取り組みは、まちおこしと呼ぶにふさわしい。各会場でさまざまな交流が生まれたことだろう。

 まちびと美術館は会場を市内全域に広げるなどして続いてきた。新型コロナウイルスの影響で20年以降は開かれていないが、池田作品をイメージした楽曲が作られるなど、住民の活動は停滞していない。

 池田さんの家族から作品などを寄贈されている資料館の担当者は「まだ眠っている作品やエピソードがあるはず。さらに掘り起こしたい」と語る。住民による活動を広げることで池田作品の発信力をさらに高め、次世代に引き継ぎながら観光客を呼び込み続けてほしい。

生誕100周年記念イベントの詳細はこちら

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