社説:北欧2国が政策転換 ロシアの侵攻に危機感

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 フィンランドが米欧の軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)に加盟申請すると表明した。ウクライナに侵攻したロシアに対する危機感から、軍事的な中立政策を転換する。隣国スウェーデンも近く申請方針を表明する見通しだ。欧州の安全保障秩序が大きく変化する。

 ウクライナ侵攻に当たってロシアのプーチン大統領は、NATO拡大は容認できないと演説した。NATO入りを目指すウクライナが実際に加盟を果たせば、ロシアにとって安全保障上の脅威になるとみたからだ。

 しかし軍を動かしたことにより、中立国のフィンランドとスウェーデンがNATO加盟に動き出した。狙いとは逆の結果を招いた。

 フィンランドの加盟方針に、ロシア外務省は「2国間関係に深刻なダメージをもたらす」と反発。軍事面を含む対抗措置を取るとの声明を出した。

 こうした威嚇するような物言いによって、いたずらに緊張を高めることは自重すべきだ。そもそも結果的にフィンランドに政策転換を余儀なくさせた原因は、ロシア側にあることを自覚する必要がある。

 ロシアと1300キロにわたって国境を接するフィンランドは、第2次大戦後は東西冷戦の下でソ連の脅威にさらされた。ソ連崩壊後も軍事大国・ロシアを刺激することを避け、中立政策を維持。欧州連合(EU)には加盟したが、NATO加盟は見送ってきた。国民もこれをおおむね支持してきた。

 しかし侵攻によって状況は一変。フィンランドではそれまで、NATO加盟を支持する世論は2割程度だったが、侵攻後の3月の調査では62%に急伸した。ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊でロシア軍の残虐行為が次々に明るみに出た後の今月上旬には76%に達した。

 NATOは1949年、ソ連の脅威に対抗するため、12カ国で結成された。冷戦終結後に相次いだ東欧諸国の加盟などにより、現在は30カ国体制だ。条約第5条は、加盟国が軍事攻撃を受けた場合は全加盟国への攻撃と見なし、武力行使を含む必要な行動を直ちに取ると規定している。

 この集団防衛の抑止力を期待し、NATO加盟にかじを切ったフィンランドの対応は理解できる。ニーニスト大統領は「ロシアは隣国に攻め込む準備ができている」と発言した。多くの国民の危機感を代弁しているといえるのではないか。

 NATO拡大阻止を狙ったウクライナ侵攻がフィンランドとスウェーデンに危機感を抱かせ、中立政策を転換させた。この現実をロシアは直視しなければならない。

 武力行使による一方的な現状変更の試みは、国際社会における自らの孤立を一層深めるだけだ。安全保障上の脅威を取り除きたいのであれば、武力ではなく対話こそが近道ではないか。

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