社説:「拘禁刑」新設 再犯防止へ体制充実を

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 懲役刑と禁錮刑を廃止し、新設の「拘禁刑」に一本化する刑法改正案が衆院本会議で可決された。今国会で成立する見通し。刑の種類を変更するのは1907(明治40)年に刑法が制定されて以来、初めてとなる。

 改正案は拘禁刑の目的を「改善更生」と明記。再犯防止を図るため、受刑者の更生に向けた指導の拡充が可能となる。「応報」のイメージが強い刑罰の概念を見直し、受刑者の社会復帰に重点を置いた改正といえる。再犯防止は新たな犯罪被害を抑制し、安全安心な社会を築く上でも望ましい。

 犯罪白書によると、2020年に刑務所に入所した受刑者のうち懲役刑は99・7%、禁錮刑は0・3%だった。出所後に再び罪を犯した再入者は全体の58・0%に上った。また、同年の刑法犯検挙者のうち再犯者の割合は過去最多の49・1%。再犯防止は喫緊の課題である。

 現行刑法は懲役刑の受刑者に木工や洋裁などの刑務作業を義務付ける。禁錮刑は受刑者の希望があれば作業をさせる。拘禁刑は作業が義務ではなくなる。

 刑務所内では社会生活に必要な知識を教え、薬物依存からの脱却などを指導する「改善指導」が行われている。小中学校レベルの基礎学力を習得させる「教科指導」や、高齢受刑者向けのリハビリ、介助などの福祉支援もある。

 ただ圧倒的多数を占める懲役刑では、義務である刑務作業を優先せざるを得ず、指導に十分な時間を割けないという状況がある。作業が義務でなくなり、時間が確保されて指導効果が高まると期待される。法改正を機に、受刑者の改善更生に向けた支援を充実させ、再犯防止につなげていかなくてはならない。

 もちろん大切なのは指導の中身だ。年齢や生育歴、犯罪に至るまでの経緯など受刑者の事情はさまざま。一人一人の課題に応じたきめ細かな対応が望まれる。高齢受刑者には福祉制度や健康管理について理解を深めてもらうことも大切だろう。

 そのためには専門性を持って指導に当たる人材の確保・育成、さらには刑務所と医療、福祉分野などとの連携強化が必要だ。刑務官には法改正の目的を改めて意識してもらいたい。改正法の施行は公布から3年以内となる見通し。可能な限り、体制整備を急いでほしい。

 指導内容の充実、体制整備とともに、受刑者本人が指導の目的や必要性に納得することも重要だ。指導に際しては十分な意思疎通が求められる。適正な指導が行われているかどうか、外部の目からチェックする仕組みも検討すべきだ。

 更生や再犯防止の実を挙げるには、刑務所内の指導の拡充だけでは十分とはいえない。出所後の住まい確保や就労などについて、これまで以上に息の長い支援をしていくことが大切だ。社会復帰した人を社会が受け入れ、見守る機運も醸成したい。

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