ローカルメディア列島リレー(33)森一峻
全国のローカルメディアの作り手が、ローカルならではのメディアの形や取り組みについて綴るリレーエッセイです。紙もウェブも、看板やアートプロジェクトだって「ローカルメディア」に?! 特色あるローカルメディアの担い手たちのアイデアと奮闘の記録です。
一般町民が編集サイトをはじめた理由
「地元民しか知らない、地元民しか書けない東そのぎです」。
くじらの髭のサイトの説明にそう記載しています。
私の暮らすまち、東彼杵町は7,600人ほどのちいさなまちで長崎県でも人口は下から数えて2番目。先日、過疎地域に指定されました。私はカメラマンでもなければライターでもありません。言わば編集経験のない過疎地域に住む一般町民です。そんな私が「くじらの髭」という地域ポータルサイトを運営し、まちの「ひと」「こと」「もの」に触れることになるとは、Uターンし、稼業を継いだ頃の十年前の自身やまちの危機的状況から考えると想像もつきませんでした。正直なところまちをどうにかしようとかそんな余裕は当時、私にはなかったのです。そんな私が今、あらゆる「ひと」にお話をお聞きすることで、「いとなみ」から「まち」に「こと」が起きはじめていて、その「こと」を「くじらの髭」という媒体を活用しアーカイブとして記録し、お伝えすることに冥利(みょうり)を感じ続けています。
地域やローカルという視点を越えて、私が今、着目しているのは、その地域に根づく「ひと」が生みだす「こと」です。この媒体を通して、社会課題や地域課題、そしてこのまちに暮らすみなさんの思いや課題を知ったことがきっかけとなり、次の一手として動きはじめました。福祉や医療、各種事業所の方の現場に従事されている「ひと」や「こと」に焦点をあて自身を見つめ直すことで、みなさんの自己概念を高めてもらえる取り組みもはじめています。
まだまだ知りたい「ひとこと」が眠っているので日々、お話を聞くために各地を走りまわりたいと思っています。
森 一峻|くじらの髭 代表
町にUターンし、拠点「Sorrisoriso 千綿第三瀬戸米倉庫・くじらの髭・umino わ」を中心に、周辺のリノベーション店舗や拠点づくりをサポート。(株)森商店、代表取締役・(一社)東彼杵ひとこともの公社 代表理事を務める。