社説:[2022参院選]農業政策 自給率向上の道筋示せ

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 食料自給率は低下が続き、生産者の減少と高齢化が進む。不測の事態が起きても食料を安定的に供給することは国の責務だ。各党、各候補は選挙戦を通じて、自給率向上、食料安全保障の強化に向けた道筋を示さなければならない。

 2020年度の食料自給率はカロリーベースで37%と過去最低水準。統計を始めた1965年度の73%から半減した。政府は2030年度の目標を45%に据えるが、下落傾向に歯止めはかかっていない。

 農林水産省によると、農業を主な仕事とする「基幹的農業従事者」は20年に136万人。10年間で70万人近く減り、現在は65歳以上が7割を占める。一方、21年の農地面積は435万ヘクタールと10年比で5%減った。

 自給率向上には規模拡大による効率化やITを活用したスマート農業推進が不可欠だ。一方、耕作放棄地の発生を抑制するには、栽培条件が不利な中山間地などでも営農を続けられるような支援が求められる。

 食料安保を考える上では生産性向上と農地保全を両立することが重要だ。いかにバランスを取り、全体の生産量を増やすか。各陣営の主張を見極めたい。

 21年の農産物輸入額7兆388億円のうち、6割は米国や中国など6カ国が占めた。自給率向上を目指すにしても、現実的には相手国との関係強化と、リスク回避を図る輸入先の多角化を並行して進める必要がある。

 ロシアによるウクライナ侵攻や円安の影響を受けた肥料価格、燃料費などの高騰も農業経営を直撃している。コスト上昇は離農や後継者難に拍車をかける恐れがあり、小売価格への影響も予想される。営農維持に向けた支援が急がれる。

 本県など稲作地帯では「水田活用の直接支払交付金」の要件厳格化に対し困惑の声が広がる。水田を活用して大豆や麦、ソバ、飼料作物などを栽培する生産者に作付面積に応じて一定額を助成するのが制度の柱だ。

 政府は今後5年間で一度も稲を植えない田んぼを交付対象から外す方針。畑作と稲作を交互に行えば引き続き対象とする。昨秋から検討してきたという。

 交付金の対象はあくまで田んぼで、5年間水稲を作付けしなければ畑としての利用が定着した農地とみなすとしている。だが、大豆やソバのように徹底した排水対策が必要な農地を定期的に復田するのは難しい。

 そもそも需要が低迷するコメから別の作物への作付け転換を促すのが制度の目的だ。需要に応じた作物の栽培は食料自給率向上にも資する。生産者は交付金を前提に主食用米より価格が安い作物を栽培している。前提が崩れて経営が立ち行かなくなれば、離農者の増加を招き、食料自給率がさらに低下する可能性もある。

 田んぼの有効活用策はどうあるべきか。各候補の訴えに注目したい。

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