北斗星(7月5日付)

 日米通算170勝を挙げ、昨季限りで引退した元プロ野球選手の松坂大輔さんは現役時代、故障に苦しんだ。プロ生活の後半は肘、肩、首と手術を繰り返した

▼1軍マウンドに上がれずにいるとインターネット上に誹謗(ひぼう)中傷があふれた。「たたかれたり非難されたりすることに最後は耐えられなかった」と語る。球史に名を刻む大投手でさえ心を折られた。卑劣な書き込みは「言葉の凶器」そのものだ

▼過熱するネット中傷の対策として「侮辱罪」の厳罰化を盛り込んだ改正刑法が7日施行される。従来の法定刑は30日未満の拘留か1万円未満の科料だが、改正法では「1年以下の懲役・禁錮もしくは30万円以下の罰金」が加わる

▼2020年、女子プロレスラーの木村花さん=当時(22)=が、出演したテレビ番組を巡り交流サイト(SNS)で中傷され自死し、社会に衝撃が広がった。これを機に厳罰化の議論が進み、政治を動かした

▼政府は悪質な投稿への抑止効果が高まるとしている。ただし、他人を攻撃する側に加害の意識があるとは限らない。誹謗中傷行為をした人の60~70%が「相手が悪い」と主張したとの研究結果もある。SNS利用者は、自分では中傷したつもりでなくても犯罪に問われ得ると肝に銘じる必要がある

▼侮辱罪の厳罰化は自由な発言を萎縮させかねないとの懸念もある。悪質な中傷と正当な批判が同一視されてはかなわない。表現の自由を脅かす動きがないかにも目配りしていかなくては。

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