社説:中国の軍事演習 偶発的な衝突回避せよ

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 中国は台湾周辺で「重要軍事演習行動」を開始。弾道ミサイル11発を発射したとみられる。軍事演習は7日までの4日間。東シナ海周辺の安全保障環境の緊迫化が避けられない。関係各国は偶発的な衝突の回避に努めなくてはならない。

 中国の弾道ミサイル5発が初めて日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したとみられる。岸田文雄首相が5日、演習の即刻中止を求めたのは当然だ。

 軍事演習はペロシ米下院議長の台湾訪問への対抗が狙いとみられる。計画が報道されてから中国側は激しく反発してきた。

 ペロシ氏が訪台した2日夜、中国は米国に対し「強烈な抗議」を表明。同時に台湾周辺6カ所の空・海域での軍事演習実施を発表した。

 現職の米下院議長の訪台は1997年以来、25年ぶり。ペロシ氏は「台湾の自由を守る米議会の決意を示した」と成果を強調した。米海軍は周辺海域に空母打撃群を派遣、台湾軍も警戒態勢を強化するなど軍事的緊張を高めている。

 中国との対立を深めることが避けられない今回の訪台の背景には、米国内での対中強硬論の高まりがある。11月の中間選挙も当然、視野に入っていたとみられる。結果的に台湾に対する軍事力誇示の口実を、中国に与えてしまったのではないか。

 一方の中国は習近平国家主席が共産党総書記の3期目を目指す党大会を秋に控えている。それゆえ軍事圧力強化などによって厳しい対抗措置を取る可能性が高い。米中双方に簡単には引くことができない国内事情があることを忘れてはならない。

 先進7カ国(G7)外相は中国軍の動きを「緊張の高まりを招く」と非難する共同声明を発表。一方、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国外相は台湾海峡情勢に「懸念」を表明する声明を発表した。

 ASEANの声明は米国と中国に対する配慮なのだろうか。両国の名指しを避けた上で、挑発的行動を控えて最大限の自制に努めることを求めた。

 日本はペロシ氏の台湾訪問に関する賛否の表明をあえて避けている。それは米国と中国の双方へ配慮した姿勢といえよう。

 中国側の申し出により林芳正外相と王毅国務委員兼外相との会談が取りやめになったのは残念だ。日本を含むG7外相が共同声明で「中国を不当に非難」したことが理由という。

 米国は演習で弾道ミサイルを発射した中国を強く非難する一方で、今週予定していた大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を延期した。これ以上の緊張を避ける目的だろう。

 軍事演習開始後、日本は中国に対し、厳しい姿勢に転じた。しかし対話すらままならない関係では事態打開に何ら関与できない。今年秋には日中国交正常化50年を迎える。冷え込んだ両国関係の改善策をなおも模索し続けることが求められる。