時代を語る・武田英文(1)秋田杉に魅せられて

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藤里の「丸上木材」事務所棟で
藤里の「丸上木材」事務所棟で

 旧二ツ井町(現能代市)生まれ。中央大法科から林学を学ぶため北海道大へ学士入学。県庁では林務畑を歩み、丸上木材の社長を務めながら、県議も歴任。現在、県林業育成協会の会長を務める武田英文さん(77)に半生を語ってもらいます。

 ◇  ◇

 生まれた時から近くに山林があり、家業も製材業でした。林業に携わるのは、事の必然だった気がします。

 山や木、中でも秋田杉に魅せられてきました。柱や梁(はり)の木目の奇麗さに引き付けられるだけではありません。山で何十年、時には何百年も風雪に耐え、年輪を刻む姿にたくましさ、そして美しさを感じるのです。

 秋田県の面積の7割は森林です。どこへ行っても山並みが目に入ります。そこにはさまざまな草木が生え、中でも杉材の蓄積量は全国最大級です。

 その際、忘れてならないのは、先人の労苦と森林保護です。杉材の蓄積は戦後造林の賜物(たまもの)です。一世を風靡(ふうび)した天然秋田杉は、江戸期の秋田藩まで歴史をたどることができます。長い歴史の積み重ねの上に、現在の秋田杉はあるのです。

 森林保護の大切さは言うまでもありません。環境保全と林業の両立が不可欠な時代になっています。治水や二酸化炭素吸収など森が果たす役割は多岐にわたります。林業はまさに「森から頂く恵み」なのです。

 一方、林業が直面する厳しさを直視しないわけにはいきません。最近は「ウッドショック」といって、木材価格が高騰、製材業も素材(丸太)生産業も潤っています。しかし、長続きしないと考えておいた方がいいでしょう。「もうからない林業」を「全国最大級の杉蓄積」とどうリンクさせ、上向かせていくか。これが今後の課題です。

 経営している「丸上木材」(藤里町)から北へ向かうと、日本初の世界自然遺産・白神山地が見えてきます。私たち人間が大いなる自然に抱かれていると感じ入る瞬間です。

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