北斗星(9月4日付)
「待つ/待っている/十九時四十八分着/花輪線の/とある駅の改札口で列車を待っている」。単身赴任中の詩人が待っているのは家族が乗る列車だろう。「とある駅」はアパートから最寄りのJR花輪線の鹿角花輪駅だ
▼「花輪沿線」は県現代詩人協会会長・前田勉さん(70)=秋田市=の詩集「橋上譚(たん)」に収録されている。2004年からの3年間、鹿角市で暮らした。自身も大館市や盛岡市に行く折などによく花輪線を利用したそうだ
▼花輪線の鹿角花輪―大館間をはじめ、奥羽線・鷹ノ巣―大館間、五能線・岩館―鰺ケ沢間、秋田内陸縦貫鉄道の秋田内陸線・鷹巣―阿仁合間で運休が続く。8月の記録的大雨の傷痕で運休の区間は代行バスが輸送する
▼JR秋田支社は8月下旬に奥羽線の復旧見通しを「2カ月程度」と明らかにした。驚かされたのは花輪線と五能線。被害が大きく、場合によって「復旧まで年単位を要する」という。内陸線も復旧の見通しが立たない
▼JR東日本は7月下旬に乗客の少ない県関係6路線11区間の収支を明らかにした。前記JR3線の運休区間も含まれる。「持続可能な交通体系について議論する」のが目的の収支公表という。とはいえ赤字額が大きい路線の沿線住民や自治体は不安が募ろう
▼通勤通学の利用ばかりでなく、高齢者の買い物や通院の足として欠かせない。中には地域の観光振興への期待を背負っている路線もある。今はただ運休区間の一日も早い復旧を待っている。
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