社説:日朝平壌宣言20年 拉致解決、猶予許されず

 日本と北朝鮮両国が国交正常化を目指すと約束した「日朝平壌宣言」から20年となった。宣言に当たって北朝鮮は、日本人拉致を事実として認め謝罪。被害者5人の帰国が実現した。だが、その他の被害者の安否調査や帰国に関しては交渉が頓挫。核問題を巡る米朝対立を背景に、日朝関係改善への動きは見えない状況が続く。

 被害者の家族は高齢化が進み、再会がかなわないまま亡くなる人も相次ぐ。問題解決は一刻の猶予も許されない。政府は事態打開の可能性を探り、粘り強い外交努力を続けなければならない。

 平壌宣言は2002年9月、初訪朝した当時の小泉純一郎首相と北朝鮮の金正日(キムジョンイル)総書記が署名。日本による植民地支配という「不幸な過去」の清算と北朝鮮による拉致問題への適切な対応を通じ、国交正常化を目指すとした。

 その後、北朝鮮の核開発問題が浮上し、日米韓と北朝鮮の対立が深刻化。日本は米国と連携して対北朝鮮制裁を強化した。一方、北朝鮮は核実験や弾道ミサイル発射を繰り返しており、脅威は高まる一方といえる。

 北朝鮮は、米国本土まで届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)を交渉カードにして、米国から現体制を保証する確約を得るのが狙いとみられる。このため日本との交渉には消極的で、国交正常化交渉は進展がない状況だ。

 拉致問題では、残る被害者の安否の再調査を求める日本と、問題は解決済みとして応じない北朝鮮の相互不信が深刻化。トランプ前米大統領は現在の最高指導者金正恩(キムジョンウン)総書記と18、19年の2回にわたり会談した際、日本の依頼を受け拉致問題を取り上げたが、成果はなかった。日本は米韓と緊密な連携を図りつつも、拉致問題に関しては独自の外交で事態打開を図る必要がある。

 安倍晋三元首相は拉致問題解決を政権の最重要課題と位置付け、無条件で金正恩氏と会談すると表明していたが、実現しなかった。岸田文雄首相はその路線を引き継いでいるものの、今のところ会談に向けて表立った動きは見えない。岸田首相の外交手腕が試される。

 北朝鮮側は宣言20年を前に、日本が制裁実施により宣言を「白紙状態」に戻したと非難する談話を出した。同様の主張はこれまでも繰り返されてきた。ただ「破棄された」とは主張しておらず、宣言の有効性までは否定していないとみられる。政府はこの点を踏まえ、拉致問題解決へ向けて北朝鮮との交渉の可能性を探るべきだ。

 日本人を拉致し、長年にわたって家族を引き裂く行為は人道に反する。拉致問題解決は被害者家族の願いに応えるだけではなく、基本的人権を尊重する法治国家として譲れない課題だ。政府が全力を挙げて解決に導くことが求められる。

お気に入りに登録
シェアする

秋田魁新報(紙の新聞)は購読中ですか

紙の新聞を購読中です

秋田魁新報を定期購読中なら、新聞併読コース(新聞購読料+月額330円)がお得です。

新聞は購読していません

購読してなくてもウェブコースに登録すると、記事を読むことができます。

秋田の最新ニュース