社説:世界ジオパーク 鳥海山の恵みに誇りを

 「鳥海山・飛島ジオパーク」の推進協議会が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)による世界ジオパーク認定に向けて活動を本格化させている。由利本荘市とにかほ市、山形県の酒田市と遊佐町の自治体や各種団体でつくる推進協の組織を6月に任意団体から一般社団法人に改組。今月はアジアのシンポジウムでエリアをPRした。2026年度の世界認定を目指す。

 世界認定された国内のジオパークは阿蘇(熊本)、伊豆半島(静岡)など9地域。東北にはない。地元住民への啓発や世界での知名度向上を図り、東北のジオパークの手本となる存在になることを期待したい。

 ジオパークは貴重な地形・地質の自然や生態系、そこに息づく文化を保全、教育や地域振興に活用しながら持続可能な開発を目指すエリア。日本ジオパーク委員会認定の日本ジオパークとユネスコ認定の世界ジオパークがある。日本ジオパークは今年1月現在、県内4地域を含む46地域。世界ジオパークは4月現在、46カ国177地域だ。

 鳥海山・飛島は16年に日本ジオパークとなった。九十九島(にかほ市)や法体の滝(由利本荘市)など70カ所のジオサイト(見どころ)の多くは、山体崩壊や噴火、地震で形成された。鳥海山は信仰の対象でもあり、修験と関わりのある神社、獅子舞番楽などの伝統文化が残る。鳥海山の雪解け水は岩ガキなど食材を育む。

 ジオパークの枠組みは、これら鳥海山の魅力を包括すると言えるだろう。地域のPRに大いに活用していきたい。

 ユネスコには各ジオパークが仲間として、ともに活動するという考え方がある。世界認定で重要視されるのが国際的な活動実績。国際会議などを通して、他地域と交流を深めることが必要だ。関係者や住民が多様な文化に触れ、意見交換できることが認定のメリットと言える。

 推進協は今後、国際会議への出席に加え、市民への啓発に力を入れることにしている。既に地元の小中高校の授業でジオパーク認定ガイドが講師を務めたり、児童生徒の研究発表の場を設けたりしている。こうした活動は地元に誇りを持ち、将来定着する人材の育成のためにも重要だ。

 タイで開かれたアジアのシンポでは、にかほ市が進める九十九島の景観を保全する圃場整備事業を説明した。環境保全は引き続き官民一体で進めたい。

 貴重な景観を保全しながら伝統文化を継承し、豊かな食を楽しむ。このように鳥海山の恵みを享受しているという住民の意識は、世界認定を機にますます高まるのではないか。

 郷土芸能や食は観光メニューになり得る。四季折々の景色は外国人に魅力だろう。ジオパークの取り組みを通じて鳥海山に感謝する暮らしを大切にしていくことが、地域外から人を呼び込むことにもつながる。

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