【ようこそ!偉人館へ】金沢市「鈴木大拙館」 東洋の考え方を世界に

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鈴木大拙館(同館提供)
鈴木大拙館(同館提供)

 東洋の文化や考え方を世界に広く伝えた仏教哲学者の鈴木大拙。国境を超え、人々に深い影響を与え続けた「世界人」に触れようと、生まれ故郷金沢市にある「鈴木大拙館」を訪ねた。(共同通信=中井陽)

 名園、兼六園のほど近く、深い緑を背景にたたずむ館は、建築家の谷口吉生さんが手がけた。研ぎ澄まされた形の三つの棟を回廊で結び、三つの庭を置いた。この静かな空間そのものが、大拙の世界観を表現している。

 英語の教師などを経て上京した大拙は鎌倉円覚寺で禅の道に入り、「たくまない(意識しない)ところに大いなるものが現れる」という意味の「大拙」という居士名を受けた。1897年に渡米し、出版社などで働き10年間生活、米国人女性と結婚した。帰国後は大学教授となり、再び英米を訪れて講義を重ね「ZEN」は世界に影響を与えた。

 企画により毎回展示が変わる大拙の書や言葉には、あえて解説が付けられていない。思想を理解できるか心もとなくなるが、水盤に囲まれた思索空間に入ると、木の葉の揺らぎや鳥のさえずりが五感に訴えかけてくる。同館には自由に考える時間と場所が用意されている。

 同館学芸員の猪谷聡さんは「先入観にとらわれず自分の目で素直に見ることを大切にしている」と話す。それが大拙の言う「無心」。子どものように、目の前のものにあるがままに向き合い、体験することだ。「情報に縛られている現代人にとって、大拙のそうした言葉はふに落ちるのではないか」。最近、携帯電話を預け、一人過ごす来館者が増えているという。



【現代アートに大きな影響】

 大拙は、海外で行った講演や著作などを通じ、現代音楽作曲家のジョン・ケージ、作家サリンジャーなど、多くのアーティストらにインスピレーションを与えた。近年、分野を超えた大拙の影響を見直す機運が高まっている。

 大拙の歩みをたどりながら、東洋思想と現代美術の関わりに焦点を当てたのが、東京・青山のワタリウム美術館の「鈴木大拙展」(7月5日~10月30日)だ。大拙の書などに加え、民芸運動のリーダー柳宗悦らとの関わり、ケージの作品などを紹介。同展の企画に関わった文芸評論家の安藤礼二さんは関連プログラムの講演で「大拙の生涯は、東洋思想の読み直しと抽象の発見にダイレクトにつながっている」と指摘した。

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