社説:八郎湖の水質浄化 民間の取り組み息長く

 八郎湖の水質浄化に向け、地元の住民団体「美しい八郎湖を未来に残す協議会」が実験をスタートさせた。アオコを餌とするシジミを放流しているほか、窒素やリンを吸着する木炭を投入。民間企業からの寄付を原資とする県の補助金を活用し、県の水質保全計画に沿う活動だ。

 協議会のメンバーは、美しい八郎湖を取り戻し、漁業や景観などを通じ幅広く八郎湖の恵みを享受したいとの思いが強い。水質の現状に危機感を持った住民主導の取り組みであり、広く官民で支えて水質浄化の効果的な対策につなげていきたい。

 八郎潟は海水の混じる汽水湖だったが、干拓後に残った八郎湖は防潮水門で日本海と遮断され、淡水湖となった。そこに農業排水などが流れ込んで窒素やリンで富栄養化。夏場には植物プランクトンが繁殖して水面を覆うアオコと呼ばれる現象が発生し、悪臭被害も出ている。

 2007年には湖沼水質保全特別措置法の指定湖沼となった。県は水質保全計画を策定し汚濁物質の発生源対策などを講じているが、水の汚れを示す指標である化学的酸素要求量はほぼ横ばい。目立った効果は上がっていない。

 協議会は八郎湖周辺の住民グループなど7団体で組織。専門家と共に水質浄化の勉強会を重ねてきた。県の第3期水質保全計画(19~24年度)は、地域住民らと協働の取り組みを推進するとしている。水質問題が長期化する中、住民主導の実験が八郎湖への関心を改めて高めることが期待される。

 協議会が特に力を入れるのはシジミによる水質浄化。水門の外の汽水域でシジミを増殖させてから八郎湖に放流する。シジミは植物プランクトンを餌とするため、アオコが減る効果があるという見立てだ。

 シジミを使った浄化は県も試みたことがあるが、湖底の泥の中では酸欠になるほか、コイによる食害もあり、期待された効果を得られなかった。協議会はこれを踏まえ、底が砂地の湖域を選び、強固なネットにシジミを入れて放流する。県と情報共有を密にして進めてほしい。

 八郎湖では1987年、工事で水門を開けていた間に台風も重なって海水が流入。一時的に汽水湖に戻ったためシジミが大繁殖し、90年には日本一の漁獲量を記録した。多くの住民が八郎湖の恵みを実感した。

 今回の実験費には、本県沖の洋上風力発電事業に携わる日本郵船の寄付金が充てられる。かつての八郎湖を取り戻そうと住民が行動を起こす中、関心を示す企業があることは心強い。

 ただし来年度以降の実験費のめどは立っていない。浄化への関心が一層高まり、支援の輪が広がることを期待したい。

 協議会の松岡正樹会長は水質浄化に加え、親水イベントや花火大会などの開催を構想。夢を共有できる人を増やし、息の長い取り組みを進めてほしい。

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