社説:県外への情報発信 県出身者と連携強化を
県内自治体が秋田ゆかりの県外の団体や飲食店と連携して、情報発信する動きが出てきた。各団体の交流サイト(SNS)や飲食店の人のつながりを通して、秋田の魅力やイベントの情報を伝える試み。本県の発信力向上を図る取り組みとして注目される。
県や市町村は広報紙のほかウェブサイト、SNSで観光PRやイベント情報を発信することが多い。ただ、それだけでは宣伝効果が十分ではないかもしれない。
県東京事務所は昨年度、県出身者らで組織し、首都圏で活動する団体と「首都圏あきたSNSネットワーク」を立ち上げた。加盟するのは「首都圏秋田県人会連合会」「WE LOVE AKITA」「フェイスブック秋田県人会」「あきたいざたん」「SCAP(スキャップ)―Akita」の計5団体だ。
会員やSNSフォロワーが1万人を超える団体もある。SNSは不特定多数の人が閲覧するため、発信元が多いほど人の目に触れる機会が増える。情報を発信する上で5団体の協力は心強い。
事務局となる東京事務所は首都圏で行われる秋田の食や伝統行事を紹介するイベント、観光や移住関連などの情報を加盟団体に提供。団体はそれぞれのSNSに投稿している。
ネットワーク構築の効果はまだ明確に見えていないが、今後検証していく必要がある。イベントや事業への反響が見込みより小さければ、自治体側が企画した内容に関心を持たれなかったとも言える。検証結果によっては、企画や発信内容を一層充実させる努力が求められよう。
横手市は本年度、市出身者が県外で営む飲食店に「横手応援拠店」として協力してもらう事業を始めた。第1弾として東京7店、仙台1店の計8店が登録。店側は横手産食材を活用、いぶりがっこや日本酒など横手の特産品もできる範囲で提供する。店内には市をPRする印刷物なども置いている。
応援拠店は横手ファンが気軽に集える拠点になってもらうとともに、その雰囲気や食事などを通して新たな横手ファンの獲得を図る狙いがある。市は市外在住者向けに無料情報紙「よこてfun通信」を年4回郵送するなど、市外から応援してくれる人の掘り起こしに力を注いでいる。応援拠店もその一環で、今後は登録店の拡大を目指すという。関係人口を創出するモデルとなる取り組みであり、事業を軌道に乗せてほしい。
県外で暮らす県出身者には「古里に恩返ししたい」と語る人が多い。そうした心強い味方と連携して本県の情報発信力を高めたい。発信に関わってもらうことは、地元では気付かない秋田の新たな魅力を発見する契機にもなるだろう。本格販売が間近に迫った県新品種米・サキホコレのPRでも大きな力となってくれるに違いない。