社説:そごう・西武売却 秋田駅前の「顔」存続を
セブン&アイ・ホールディングスが、傘下の百貨店そごう・西武を来年2月に米投資ファンドへ売却すると発表した。対象店舗には西武秋田店(秋田市)も含まれる。新たな資本の下でも秋田店が閉鎖されることなく、これまで同様に営業が続くことを期待したい。
そごう・西武は2009年9月には全国で28店舗を展開していた。その後、不採算店を閉店。現在は首都圏と本県、福井県、広島県の計10店舗を営業する。セブンは再建を目指してきたが、20年2月期から純損益が3期連続の赤字。ネット通販の台頭や新型コロナウイルス禍に伴う消費低迷などで業績を回復させられなかったという。
セブンによると、売却額は2500億円を基準とし、負債などを差し引いて確定させる。全株を売却することで局面打開を図る方針だ。相手先に選んだのは、不動産投資ファンドとして世界最大級の米フォートレス・インベストメント・グループ。フォートレスは家電量販店大手ヨドバシホールディングスをパートナーとし、百貨店の再生を目指す意向を示している。
その方策の一つとして、百貨店へのヨドバシ出店が検討されているという。ただ、出店先は旗艦店の西武池袋本店(東京・南池袋)など首都圏の主要な店舗に限られるとみられる。
気がかりなのは地方店がどうなるかだ。西武秋田店の従業員は約140人に上り、テナントでも約480人が働いている。
セブンは売却先の検討段階で「従業員の雇用が維持されるかという観点も非常に重視した」とし、フォートレスは「その観点にかなうと判断した」と強調。「秋田店を含め百貨店事業を継続すると聞いている」と説明する。だが現段階でフォートレスは、全ての店舗を維持するという決定を示していない。
フォートレスは小売業より不動産分野に知見があるとされる。百貨店経営の手腕は未知数だ。地方店にどの程度のてこ入れをするのかは見通せない。収益性が低いと見なせば閉店や従業員削減などのリストラ対象にする可能性も考えられ、先行きは不透明だ。今後の行方を注視する必要がある。
西武秋田店は、1984年に開店した本金西武の時代からJR秋田駅前の「顔」として親しまれてきた。コロナ禍では一時休業を余儀なくされる窮地にも直面したが、秋田牛や水産加工品を販売して地元事業者を応援するなど、さまざまな企画を展開。お歳暮やバレンタインなどの商戦でも中心市街地の商店街盛り上げの中核となり、にぎわいづくりに貢献してきた。その存在意義は極めて大きい。
周辺地域ではマンション建設が相次ぎ、居住人口が増える傾向にある。西武秋田店はますます地域に必要とされる商業施設となり得るだろう。中心市街地活性化を加速させる意味でも存続を強く望みたい。