社説:日中首脳会談 関係改善への第一歩だ

 岸田文雄首相は中国の習近平国家主席とタイ・バンコクで会談し、国交正常化50周年を機に関係安定化に向け協力する方針で一致した。日中首脳の対面会談は約3年ぶり。冷え込んでいた日中関係改善への第一歩として評価されよう。

 コロナ禍の影響で2020年に習主席の国賓としての来日が延期となって以降、日中関係は停滞していた。背景には激しさを増す米中両国の覇権争いがある。沖縄県・尖閣諸島周辺での中国公船による領海侵入が日中関係に大きな影を落としてきたのも確かだ。

 首脳会談で岸田首相は、尖閣諸島を含む東シナ海情勢や中国による弾道ミサイル発射などについて「深刻な懸念」を伝達。一方、習主席は台湾や人権の問題を念頭に「中国内政への干渉は受け入れない」と日本をけん制した。

 両国間にある懸念や対立は容易に解決できるものではない。ただ首脳の対面会談が継続し、今後も緊張緩和を模索する機会となればその意義は大きい。

 会談では林芳正外相の中国訪問調整で一致した。さらに閣僚級の「経済対話」「人的・文化交流対話」の早期再開でも合意。首脳を含むあらゆるレベルでの対話、交流こそ安定的な関係構築につながる。

 防衛当局間の相互通報体制「海空連絡メカニズム」の柱となるホットラインの早期運用開始、外交・防衛当局高官による「安保対話」など意思疎通の強化も図られる見込み。緊張関係が続く東シナ海での偶発的な衝突を防ぐために不可欠だ。

 習主席が両国間には「多くの共通利益と協力の余地がある」と述べたように、関係を深める努力は双方にとって有益になり得る。岸田首相の唱える「建設的かつ安定的な関係」は安倍晋三元首相がかつて提唱した「戦略的互恵関係」と比べ後退した感もあるが、現在の両国関係にとっては現実的目標といえる。

 中国は日本にとって最大の貿易相手国。気候変動対策、医療介護など対立点のない分野を手始めに協力関係を再構築していくことも期待される。

 ロシアによるウクライナ侵攻を巡っては核兵器を使用してはならず、核戦争を行ってはならないとの見解で一致。習主席は米国などとの首脳会談でもウクライナでの核兵器使用や威嚇に反対を表明している。

 岸田首相は、異常な頻度でミサイル発射を続ける北朝鮮に対する深刻な懸念を伝達し、国連安全保障理事会を含め北朝鮮との関わりが深い中国が役割を果たすことに期待を表明。日中は拉致問題での連携を確認した。

 昨日は北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射、北海道沖の日本海に着弾した。日米韓など各国は結束して対応する必要がある。さらに3国をはじめとする国際社会は中国に北朝鮮への働きかけを強く求めていくべきだ。

お気に入りに登録
シェアする

秋田魁新報(紙の新聞)は購読中ですか

紙の新聞を購読中です

秋田魁新報を定期購読中なら、新聞併読コース(新聞購読料+月額330円)がお得です。

新聞は購読していません

購読してなくてもウェブコースに登録すると、記事を読むことができます。

関連ニュース

秋田の最新ニュース