社説:風流踊、無形遺産へ 登録機に継承へ弾みを

 鹿角市の「毛馬内の盆踊(ぼんおどり)」や羽後町の「西馬音内の盆踊」を含む24都府県の民俗芸能計41件で構成する「風流踊(ふりゅうおどり)」が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産にあす30日夜にも登録される見通しだ。人口減や高齢化で担い手不足が課題となる中、登録を機に継承活動に弾みがつくことを期待したい。

 モロッコで28日に開幕したユネスコ政府間委員会で登録可否が審査される。ユネスコの評価機関は「文化の多様性や人類の創造性を証明」といった審査基準を満たすとして既に登録を勧告。審査は勧告を尊重するのが通例で決定は確実とみられる。

 風流踊は華やかな衣装をまとい、太鼓や笛のはやし、歌に合わせて踊るのが共通の特徴。豊作祈願や災厄払い、先祖供養など地域の歴史や風土を反映した祈りが込められている。その価値が国際的に認められた意義は大きい。伝統を後世に引き継ぐ上で地域の励みとなろう。

 今回対象となった41件は東北から九州まで広域にまたがり、いずれも国の重要無形民俗文化財に指定されている。政府は各地で伝承され共通の特徴を持つ踊りをグループ化し、無形文化遺産への一括登録を申請した。

 一括申請方式は「和紙」(2014年登録)や「山・鉾(ほこ)・屋台行事」(16年)、男鹿のナマハゲを含む「来訪神」(18年)などに次いで5件連続。申請手法として定着したと言える。

 ユネスコは近年、無形文化遺産の急増に伴い、毎年の審査件数を抑制している。従来は年間50件前後で推移してきたが、今夏には上限60件と明確化。一括申請はこうした方針への対応策として始まった。

 この方式は、ユネスコの審査で「地域文化の多様性を示す」と高く評価されてきた。個別申請に比べ、登録を早めるのに有効といえ、伝承する地域間の連携を通じた観光PR効果も期待できる。今後も活用すべきだ。

 長引く新型コロナウイルス禍は、伝統芸能にも影響を及ぼした。「密」を避けるため、西馬音内、毛馬内とも20年以降、中止や規模縮小、無観客の対応を余儀なくされた。今夏は3年ぶりに観客を入れるなどして開催にこぎ着けた。

 風流踊には災厄を払い、安寧な暮らしを願う祈りが込められている。災害の多い日本では、被災地復興に向けた精神的な支えにもなってきた。登録を追い風に、コロナ禍収束に向けて多くの人を元気づけてほしい。

 鹿角市は大日堂舞楽、花輪ばやし、大湯環状列石に次ぐ四つ目のユネスコ遺産となる。他にない特色を生かした情報発信も求められる。

 無形遺産の魅力をより積極的にアピールし、多くの人に継承活動に参加してもらう努力が欠かせない。オンラインによる配信などの取り組みも有効だろう。国や自治体には地域の実情を把握しながら、継承や普及の支援に力を入れてもらいたい。

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