【トーハク見聞録 150年のきらめき】金属工芸品「兎水滴」 形に工夫凝らした文房具
創立150年を迎えた東京国立博物館(トーハク)が所蔵する金属工芸品「兎水滴」(江戸時代・18~19世紀、渡邊豊太郎氏・渡邊誠之氏寄贈)について、清水健研究員に話を聞きました。
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水滴は墨をするときにすずりに水を差すための道具で、筆で字を書くことが多かった時代には欠かせない文房具でした。素材は金属や陶磁器が多いのですが、江戸時代にはろうを原型に用いる鋳造の技術が発達し、形に工夫を凝らした銅製の水滴がたくさん作られました。
手のひらサイズのコンパクトな文房具で、動物や植物、人物などさまざまな形の水滴が残っています。この兎水滴もその一つで、銅製のつやのある見た目、丸くデフォルメされたデザインは思わず手に取りたくなります。墨をするたびに、今にも動き出しそうなウサギと顔を合わせることを想像すると大変楽しげです。
ウサギは食用や狩猟の対象としても身近な動物であることから、日本では古くから文学や美術のモチーフとして表現されてきました。
江戸時代の人々は、印籠や根付けといった技巧を凝らした小物を身に着けることで、おしゃれを楽しんでいました。水滴もさまざまなデザインの物を使用することで、おしゃれやコレクションを楽しんでいたことでしょう。
2023年はうさぎ年です。トーハクでは、干支のウサギにまつわる美術作品を多数集めて新春気分を盛り上げる特集展示が行われます。(文の構成と漫画、いわきりなおと)
【メモ】「兎水滴」は、2023年1月2日~29日に開催の「博物館に初もうで 兎にも角にもうさぎ年」で展示。
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