さかいゆう、シティーポップに「共鳴」 山下達郎、ユーミンらをカバーした新アルバム
1970~80年代の日本のポップソング「シティーポップ」が海外でもブームとなる中、シンガー・ソングライターのさかいゆうが10曲をカバーしたアルバムをリリース。「まんまのコピーではない。人気に乗っかった感覚は全然ないですね」。豊かな想像力でジャンルにとらわれない音楽を作ってきた自負をにじませる。
新作「CITY POP LOVERS」は山下達郎「SPARKLE」や松原みき「真夜中のドア」など全10曲だ。荒井由実(松任谷由実)の「やさしさに包まれたなら」はテンポや拍子を変え、「バラードが1曲欲しいと思い、聴きながら眠りに落ちるイメージで作りました」
打ち込みによるバックビートを強調したのは竹内まりやの「プラスティック・ラブ」。自身の歌い方も含めて、原曲にはない「R&B感」を出した。
かまやつひろしのボソボソとした節回しが異彩を放つ「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」にも挑戦。「ちゃんと音を付けて、全部発音しています。ムッシュさんに『ちゃんとやりすぎだよ』と言われそうですが、大正解でしたね」と笑う。
シティーポップの魅力を「都会の、意味付けの嵐に疲れた人たちが楽に聴ける音楽」と語る。「時を超えて自分と周波数が一致し、共鳴する」と愛し、影響を受けてきた。
それは同じミュージシャンとして、作り手の思いが分かるから。「聴く人の生活に溶け込むような、スタジオを感じさせない音楽には技術がいる。才能だけじゃなく、リバーブ(残響)一つにこだわる配慮というか、職人の手跡、足跡を感じられるんです」
レコーディングは「上流から流れてきたものを歌い継ぐ感覚」だったという。「先人たちに生かされているなと思いました」
初回限定盤には出身地・高知県土佐清水市で行ったライブの映像を付けるなど、故郷への思いは強い。「僕の歌はどこか土のにおい、潮の香りがする。都会を目指しているような音なんですよね。でもそれも良いバランスなのかな」
(取材・文=共同通信・瀬野木作、撮影=間野萌)