社説:県職員の自殺 反省と再発防止の徹底を
県職員が職務に関連し自殺する事案が続いた。県は事態の深刻さをしっかり認識し、二度と繰り返されないよう対策に万全を期さなければならない。
2018年12月、県長寿社会課に勤務する20代男性職員が自ら命を絶った。13年度に県職員に採用され、16年度から同課に配属。自殺当時は国民健康保険事業費納付金の算定業務などを担当していた。
国民健康保険の財政運営主体が市町村から県に移行した初年度だった。新たな業務が多く、財政規模は年間900億円超。若手職員1人で担うのが困難であることは容易に想像できるのではないか。
男性は同年11月、出勤時に意識を失って倒れたが、救急搬送後も仕事に穴をあけたことを心配していたという。自殺はそれから間もないことだった。
男性の遺族は21年11月、過酷な業務負担を強いられ、精神的に追い詰められたために自殺したとして県に損害賠償を求め提訴。県は安全配慮義務違反を認め、裁判で争わない方針を示してきた。
今年10月には謝罪の上、7590万円の和解金を支払うことで遺族と仮合意。佐竹敬久知事は、「業務量に十分注意して職員を配置する」などと再発防止へ決意を述べた。
男性の自殺は公務災害に認定されている。認定の通知書は、男性が抱えていた業務は相当に困難で量的にも過重だったとする。男性が置かれた状況を上司や周囲の職員らが的確に把握し、対応できなかった事実を重く受け止めなければならない。
今年8月には記録的な大雨による災害復旧業務に当たっていた地域振興局の男性職員が自殺。上司によるパワーハラスメントを示唆する遺書があった。
振興局職員の上司の部長(当時)は、職員に対し大声での責(しっせき)や無視などを繰り返していた。大雨災害時には威圧的な言動が顕著になり、職員が大雨対応のため徹夜勤務をしていた際も責や無視があったという。
自殺はその数日後。遺書には「屈辱的な言葉を吐きかけられ、無視されるようになった」「自分は何のためにいるのか」などと記されていた。
部長は強く指導したことを認めたが、パワハラは否定したという。県は「パワハラが原因で自殺した可能性は否定できない」とする。パワハラ自体許されないことであり、職員研修などを通じ防止に努めるべきだ。
県は11月、部長を減給10分の1(3カ月)の懲戒処分とし、上席主幹に降格させた。県がパワハラを理由に職員を懲戒処分としたのは初めてのことだ。
県職員の自殺が続いた背景に、県庁内の労働環境が抱える共通の問題はないか検証が必要だ。特定の職員の負担が過重になっていないか点検して、問題があれば直ちに人員配置を見直すなど柔軟な対応が求められる。