ローカルメディア列島リレー(39)鳥羽和久(寺子屋ネット福岡代表)

連載:ハラカラ 第40号 Dec 2022

全国のローカルメディアの旗手が、どんなふうに、独自の発信の場を作っているのかを綴るコーナーです。紙もウェブも、ラジオもアートプロジェクトも、料理教室だって「ローカルメディア」に? 日々の取り組み、アイデアと奮闘の記録です。

よそ見をしたときに


 まだ学生だった2002年に学習塾を開業。中卒の卒業生たちに来てもらおうと塾の中に単位制高校部門を作ったのが2010年。そして2016年にはたと気づく。15年間ずっと子どもとしか関わっていない。巷(ちまた)の大人の生活に触れていない。自分が子どもというやさしくて生温(ぬる)い環境の中に自閉するように日々を生きていることに気づいて、このままではマズいと直感した。大人と関わることができるメディアの創出が自分のために必要だと思った。

 2016年の春、教室の1階に自習室と書店とらきつねを開く。自習室はイベント会場としても使用できるように可変性の高い仕様にした。齢50を超えるYAMAHAのアップライトピアノも置いた。最初のゲストは敬愛するシンガーソングライターの寺尾紗穂さんと決めていた。

 この年以来、途切れることなくイベントを開催し、多数の方がイベントに参加してくださった。中でも、寺尾紗穂さん、石川直樹さん、坂口恭平さんは10回以上、とらきつねに来てくださった。「好き」で繋がることは、こんなに心強いことなんだと実感した。さらに、寺尾さんや石川さんとの出会いが、本を書いて発表するという新たなメディアを生み出す機会をもたらしてくれた。

 千人を超える子どもたちと関わる中で、学校の勉強や受験という「人を測る」方法がいかに一面的で偏りのあるものであるかを痛感することが多々あった。そんな偏った世界に鬱屈(うっくつ)しがちな子どもたちが、よそ見をしたときに、視界の隅っこによくわからない奇妙なものが転がっているのが面白い。いま、とらきつねという場がそんなふうに機能しているのが嬉しい。


とば・かずひさ
1976年、福岡県生まれ。福岡市の大濠公園近くで、書店「とらきつね」や単位制高校「航空高校唐人町」を併設する学習塾「唐人町寺子屋」を運営。著書に新刊『君は君の人生の主役になれ』(筑摩書房)、『親子の手帖 増補版』(鳥影社)、『おやときどきこども』(ナナロク社)など。

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