膨らむ赤字、大雨で打撃でも… 住民の大切な足と再認識

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頑張れ! 秋田のローカル線(上)

「線路は続くよどこまでも」というよく知られた童謡があるが、最近は線路、特にローカル線はどこまでも続くとは言えない状況にある。昨年は記録的大雨の影響でJR奥羽線、五能線、花輪線のほか、秋田内陸線が長期間の運休を余儀なくされた。復旧が今年に持ち越された区間もある。また、JR東日本は昨年7月、利用者が少なく、今後維持が難しくなると予想される地方路線の収支を初めて公表。県内では6路線、11区間が挙げられた。地域住民の足であり、観光資源でもある地元の鉄路をどう守っていくべきか、模索が続いている。(デジタル編集部・鎌田一也)

船越水道に架かる鉄橋を渡るJR男鹿線の列車

【JR男鹿線】間もなくSuica導入なのに…「まさか」


昨年11月上旬、午前7時過ぎの船越駅(男鹿市)。通勤、通学客でごった返すホームに、秋田行きの4両編成の蓄電池電車「ACCUM(アキュム)」が到着。大勢の人を乗せ発車した。その後に到着した男鹿行きの列車からは高校生たちが続々と下車してきた。

通勤・通学客でごった返すJR船越駅


最新式の電車が投入され、2018年には男鹿駅が移転新築。今年はIC乗車券「Suica(スイカ)」が使用可能となる。そんなJR男鹿線(追分―男鹿間)も、新型コロナウイルス感染拡大以前の19年度の輸送密度(1日1キロ当たりの平均利用者数)は1781人で、10億8600万円の赤字を抱えていた。JR東日本の公表対象に含まれたことに対して、男鹿市の杉本一也企画政策課長は「廃線を含めた議論の対象になるとは、頭の片隅にもなかった」と驚きを隠さない。

雪景色の中を走る秋田内陸線の車両=小渕駅周辺

【秋田内陸線】通学などに欠かせぬ足、運休中は利用者3割減


秋田内陸線の阿仁合―鷹巣間(いずれも北秋田市)は、昨年8月の記録的大雨の影響で121日間にわたり運休した。第三セクターの秋田内陸縦貫鉄道(吉田裕幸社長)が国鉄から運営を引き継いだ1986年以降では最長だ。

運休中は代行バスを走らせたが、列車よりも移動時間が長いため、停車場所を大幅に減らさざるを得なかった。運行再開した昨年12月12日朝、代行バスが止まっていなかった桂瀬駅のホームに、近くに住む加賀光生さん(16)=大館桂桜高1年=の姿があった。「運休中は、車で学校まで送り迎えをしてもらっていたので父には迷惑をかけた。運行が再開してくれて良かった」と笑顔で列車に乗り込んで行った。

合川駅前に到着した代行バスに乗り込む高校生たち


沿線人口の減少などで慢性的な赤字が続く秋田内陸線。とはいえ、高校生の利用者が多い通学時間帯はバス3台を同時に運行して対応していた。地域住民の大切な足として列車の存在意義はまだまだ大きい。

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