【東京舞台さんぽ】「二月の勝者」 中学受験の塾ひしめく吉祥寺
テレビドラマ化された高瀬志帆さんの漫画「二月の勝者 絶対合格の教室」は、首都圏でブームの中学受験をテーマにしたヒット作。舞台となる東京・吉祥寺は中学受験熱が高い地域で、学習塾がひしめいている。(共同通信=近藤誠)
東京都武蔵野市のJR吉祥寺駅前には、中学受験専門の塾として登場する「桜花ゼミナール吉祥寺校」校舎のモデルとなったビルがある。実際に塾は入居していないものの外観はそっくりで、カリスマ講師の黒木蔵人や新人の佐倉麻衣らが教える声が聞こえてきそうだ。
小学校の授業が物足りず、勉強ができることもスポーツと同じように特技として認めてもらいたい女子や、宿題の答えを丸写ししてしまう男子まで、漫画にはさまざまなタイプの受験生が登場する。共通の目標に向かって切磋琢磨し友情を育む姿は、受験が子どもを苦しめるといったイメージとは遠い。
最難関とされる「男子御三家」の一つ、開成中学を目指す島津順と上杉海斗は井の頭公園(武蔵野市、三鷹市)の弁財天に合格を祈願し、2人で1枚の絵馬を奉納した。また同公園の七井橋周辺の情景は作中でよく描かれ、通勤前に黒木や佐倉が立ち寄る場面で登場する。
駅から東南に延びる井ノ頭通りに架かる歩道橋上では「女子御三家」の一角、女子学院中学を志望する直江樹里と柴田まるみが、夕日を背景にして互いを励まし合った。作中でも指折りの感情を揺り動かされるシーンだ。
夕方になると吉祥寺駅周辺は、教材で重たそうなリュックを背負って、弁当袋を提げた子どもたちが目立つようになる。塾へと吸い込まれていく小さな背中に「頑張れ」と心の中でつぶやいた。
【メモ】吉祥寺駅北口の駅前広場には、国内最高齢の69歳で死んだ、アジアゾウの「はな子」を記念して建てられた銅像がある。井の頭自然文化園で長く愛された。